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    あぜみや

    @AZE_MIYAAAA

    気分が良いと投稿するし、気分が悪いと削除する。
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    あぜみや

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    古(いにしえ)にプライベッターに投稿した卡米尔と佩利の学园軸なんちゃって小説。カップリング要素は無し。
    当時投稿したやつとは一部修正・加筆をしてます。

    弟心と秋の空は移り変わりやすい。ある日の昼下がり、財布の中身とにらめっこする卡米尔は頭を悩ませていた。最近スイーツの買いすぎで今月のお小遣いがピンチなのだ。まだ10月中旬、これから美味しい秋のスイーツがたくさん出る予定なのだ。
    しかしこのままではケーキバイキングどころかファミレスでパフェを1つ(1つで満足した試しはないが)食べるのにも苦労するかもしれない、そんなの嫌だ、僕はケーキが食べたい。
    というか秋は美味しいものが多すぎるのが悪い、そうだ、きっとそうだ。
    卡米尔は自分の中で結論を出してからランチボックスを片手に高等部の教室へ向かった。

    そんな訳でどこか安くて美味しいケーキ屋はないかと教室で頬杖をつきスマホ画面をスライドしている中、とあるニュースに目を止めた。その店の売り文句には『身長差が大きいほど割引きキャンペーン』と書かれている。これだ、身長差なんてまさに僕と兄貴とで十分だ。いつも兄貴にケーキバイキングを付き合ってもらっている。今更断る兄貴じゃない、また一緒に来てくれるか頼んでみよう。
    しかし卡米尔は気付く、兄貴と行くより佩利と行った方がさらに身長差で割引くのだ。出来ることなら出費を抑えて食べたい。いやでも佩利とケーキバイキング行くか?いや行かない、僕は行かない。しかし卡米尔の心には1つの悩みが浮上する。
    「兄貴…僕とケーキの店行ってもあまり食べないしな…」
    兄貴が甘いものが好きではないのは知っている、それでも兄貴は優しさでいつも付いてきてくれるのだ。でもそれをもし面倒だと思っていたらどうしようか、普段から付き合っていては疲れたりしないだろうか、兄貴の迷惑になる事は絶対にしたくないし申し訳ない。
    不本意だけど、本当に悔しいけど、今回は佩利に頼んでみようか。まだ佩利の方が甘いものも食べる奴だし…割引きも増すし…。

    という事で後日、佩利が1人で歩いている所を見計らって声をかけることにした。こんな理由で佩利と話している場面を誰かに見られるのは嫌なので迅速に、簡潔に事を済ませる。
    「佩利、今度俺とケーキの食べ放題に付き合ってくれないか」
    「え、珍しいな。ボスと行かなくていいのか?喧嘩でもしてんの?」
    そんな訳あるか、僕と兄貴の仲だぞ。
    「そういうのじゃないけど、今回は佩利との方が都合がいいんだ、頼む」
    と苦い顔をしてお願いすると、まぁいいけど、と承諾してくれたのでスケジュール張にケーキのシールが1つ増えた。

    日曜日、佩利と駅で待ち合わせをして(もちろん佩利にはちゃんと外出用の服を着てもらった、僕の横に並ぶにはそれ相応の服を着てもらわないと困る)、目的の店へと歩いた。
    駅から5分もすれば見えてくる白い外装の綺麗なガラス張りが目立つ店だった。開店前なのに既に沢山の女性やカップルが並んでいて野郎2人で来る人なんて僕らぐらいだったが、佩利は気にせず一緒に並んでくれた。
    兄貴はこういう時の待ち時間をつまらないと思っているのだろうか、佩利はずっと横で僕に話しかけてくるので曖昧な相槌で適当に流す。佩利も行列に並ぶのを嫌がるタイプだから今も苦なのだろうな、兄貴は話しかけたりしない人だが、佩利は話し相手が欲しい人なのだ、少し申し訳ないと思ってしまった。
    30分後、オープンのベル音と同時に店に入る事が出来たので席に座れた。良かった、待っている間に佩利が素行の悪い態度でも取ったらどうしようかと思ったが真面目に待ってくれた。そういう所は良い子だよと嫌味っぽく褒めてやった。

    早速陳列されたケーキを見て端から順番に皿に乗せていく、モンブランにスイートポテト、ぶどうのチーズケーキにタルトタタン、ほうじ茶のシフォンケーキ。悩んだ末に綺麗に盛り付けて席に戻る、ケーキの匂いといい、この場の空気感といい、目の前の幸せと言い、思わず顔が緩んでしまう。対面に座る佩利も最初はファンシーな内装に少し居心地悪そうにしていたが今はケーキをムシャムシャと下品な食べ方だが美味しそうに頬張っている。
    あぁ、そういえば、兄貴と食べに来ても兄貴は全然食べない人だったな。こうやって誰かと一緒にケーキを食べるのは久しぶりかもしれない。
    「このケーキ美味いぞ!」と笑う佩利を見て思わずそうだな、と言い返し僕もケーキを口に運んだ。僕ほど沢山は食べていないが、それでも佩利もそれなりの量を食べていった。せっかく身長差の割引きの為に佩利と来たんだ、食べるからには元取るぞと一緒に意気込んだ。

    程なくして佩利が「なんかボスが卡米尔と一緒にケーキ食べに行く理由がわかったかもなぁ」と言い出した。
    なぜこのタイミングで兄貴の名前が出たのかわからないが、気になるのは内容の方だ。兄貴が?僕と食べに来てくれる理由?動揺しながらも「それどういう意味だ」と聞き出す。「いや、な?ボスって甘いの食べないだろ?なのに何で卡米尔の甘いもん巡りに付き合ってんの?って前に聞いたらよォ、ボスが『ケーキ食ってる卡米尔見るだけでも十分楽しいぞ』って言ってたんだよ、なんか今その意味が分かった気がする」と佩利は僕の顔を見てガハハと豪快に笑った。なんだそれ、僕を見るのが楽しいのか?兄貴は。
    さらに詳しい話を聞き出すと「なんか一生懸命にケーキ食べるんだな、卡米尔って。幸せそうに食べるし、なんかリスみたいだしそりゃボスも楽しいって言うわ」なんて言うから無性に恥ずかしくなってきた。クソ、まさか佩利ごときにそんな事を言われる日が来るとは。というかなんだその会話、兄貴とそんな話してたのかとムカついたが、その気持ちは僕も今分かった気がした。誰かが美味しそうに料理を口に運ぶのは見ていて気分が良い、佩利の口についた食べカスの生クリームを見て僕は情けなく笑ってしまった。

    2人とも満足のいくまでケーキを食べ尽くし、しっかりと割引きキャンペーンを活用して店を後にした。途中から盛り上がって「全部のメニュー食べるぞ!」とか言い出したからヒートアップしてしまっだが、横で「いやぁ〜食った食った!」と笑うのを見て「佩利、今日はありがとう」と感謝の気持ちを声に出した。僕がお前なんかに感謝する日が来るなんてな。「たまにはケーキも悪くないかもな!焼肉ばっかりじゃ飽きるだろ?」「はは、兄貴が聞いたら何て言うか…」
    まぁ、でも、たまには悪くないかもしれない。



    「…っていう事があったんですよ」
    と、朝の通学中に雷狮に昨日の出来事を話すと冷たい声で「…へぇ〜……」と随分な塩対応を取られた。あれ、いつもなら「良かったな」とか「美味かったか」とか言ってくれるのに、体調でも悪いのだろうか。「兄貴?どうしたんですか?」「いや…別に…別に?何でもないが?楽しかったのならそれでいいが?」「な、なんでそんなぶっきらぼうなんですか…?」
    そんな光景を後ろから見ていた帕洛斯、ここぞとばかりにスマホ取り出してメモを残す。何も知らない佩利が眠そうに横で歩いているが、そういえば今朝も卡米尔と佩利の距離感が近かったような気がする。真相はそれだった事に気付き哀れな雷狮に内心ケラケラ笑ってやった。
    今日は朝から気分が良い、次の新刊のネタが決まった。
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