不自然に浮かび上がった意識で彼が最初に感じたのは、何かに包まれたような感覚だった。素肌をくすぐる羽毛のような感触は、やがて優しく抱きしめるような手触りに変わった。全身が海に浸かったような心地よさ、敵意など見当たらない慈愛に満ちた仕草の間で、しかし肉体の神経を正面から逆流させる強烈な違和感が脳裏をよぎる。 彼の身体に触れる冷たく固い手触りは一人二人のものではなかった。
火傷を負ったように目を開けたとき、焦点の定まらない視界を占領したのは一面の黄金色だった。やがて海が割れるように目の前が開き、生まれたままの姿で虚空に突き落とされたと思った次の瞬間、手足に慣れた軍服の感触が感じられる。不可解な一連の出来事に眉をひそめた彼が頭を下げて自分の体を見下ろした瞬間、頭に被っていた軍帽が落ちる。 それを掴もうと手を伸ばした瞬間、突然、直前までしっかりと踏ん張っていた床に足が落ちる感覚が彼を襲った。数千、数万人が足首に絡みつき、引っ張られる感覚。背筋を駆け上がる感覚は、偶然にもほんの数十秒前まで彼を包んでいた金色のような色だった。
彼が目を逸らした隙に床に落ちようとしていた軍帽を掴んだのは、白い手袋に包まれた手だった。反射的に視線を上げた彼が直面したのは、不快なほど見覚えのある顔だった。 その見覚えの前で、彼は反射的に脳の片隅を探り、自分が最も無関心だったものを引き出した。 それは自分自身についてだった。まるであの者が彼とは確実に違う存在であることを証明するかのように、しかし彼は無意識のうちにその事実すら否定した。今、対面した二人の身体が同一人物に見えるほど似ているという事実自体を認める気もなかったからだ。
ラインハルト・ハイドリッヒは乱れた姿勢を直した。足首を掴んでいた無数の亡者の手は、節度のある、断固たる拒絶に呆然と離れていく。 その様子を興味深げに眺めていると、目の前の男が軍帽を手渡す。自分とそっくりな口角がゆったりとした弧を描くのを見て、彼の無表情が一段と固まり、逆に男は楽しそうに目を歪めた。喉元でくすくすと笑う男の肩が小さく揺れ、その上に垂らした長い金髪がさらさらと落ちる。好奇心を隠す気もない金色の瞳が見守る中、ハイドリヒは軍帽をかぶった。