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    御子柴

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    【トライブナインSS】『ジューン・プライド』

    『ジューン・プライド』⚠︎ATTENTION⚠︎

    ・当作品は理不尽都市アクションゲーム「トライブナイン」の二次創作SSです。時間軸としては三章後あたりを想定していますが、一章さえクリアしていれば見れると思います。アニメのネタバレはおそらくありません。また、資料の不十分さやプレイから時間が経っていることから矛盾が生じている可能性がございます。
    ・本編で一切出てこない謎のワードが出てきます。
    ・轟英二×彩葉ツキのカップリング要素を含みます。
    ・当作品はフィクションです。

    以上が了承できる方のみ先へお進みください。

    ----------------------------

    「皆さん、本日はご協力ありがとうございます」

     五反田が頭を下げた先には、四人の男女──彩葉、轟、雪谷、西郷がいた。彼らはいつもの動きやすい格好から一変、まるでこれから結婚式を迎える新郎新婦のような格好をしている。

    「ううん、大丈夫! むしろこんな可愛いウエディングドレスが着れるなんて嬉しいよ」
    「ふん、馬子にも衣装と言ったところか」
    「もー、そんな言い方しなくたっていいじゃん!」

     いつものイヤミな轟に、彩葉がむくれる。その様子を見ていた五反田は苦笑しながらも、フォローをする。

    「轟さんの言い方に問題はありますが……確かに、皆さんよくお似合いです。サイズもぴったりのようですし。ねえ、大井」
    「ええ。事前の申告より僅かに体型が違う方もいらっしゃいましたが、誤差ですね」

     体型が違う方、と聞いた彩葉はぎくりとした。まさに、その『体型が違う方』が自分を指していたからだ。
     きちんと運動はしていた。しかし、それでも少しばかり太ってしまっていたらしい。
     彩葉は先日食べすぎたプリンのことを思い返す。もしかしなくても、それのせいだろう。
     そんな彩葉をよそに、雪谷が西郷に話しかける。

    「ね〜ね〜西郷〜。この服動きづら〜い。脱いでいい?」
    「まだ仕事は終わっていない。もう少し待て」
    「え〜。でもでも〜、きついし〜。こんなんじゃ、ごはんぜんぜん食べれないじゃん」

     雪谷はぶーぶーと、子どものように抗議する。
     仕事──今回、五反田がトラッシュトライブのメンバーに頼んだこと。それは彼の新しい事業に関わることだ。
     最近巷で通称『XB』が流行っているらしい。『エクストリーム・ベースボール』ではない。『エクストリーム・ブライダル』だ。式により千差万別である為詳細は不明だが、とにかくエクストリームな結婚式らしい。
     そして五反田がそのXBの新事業を始めるにあたり、用意したシステムのテスターをトラッシュトライブのNINEで募った。それに集まったのが彼らだった。
     「ごはんが出るから」と、自らその仕事に名乗り出たというのにこの体たらく。西郷は念の為ついてきて正解だった、と内心頭を抱えた。

    「……大井。事前に言っていた料理はいつ頃出せそうだ」
    「ああ、料理でしたらこれから作り始めますので、暫くはかかるかと。早くとも二十分後に最初の料理が出る計算です」
    「だ、そうだ。だからそれまでは耐えろ。えのき」
    「にじゅっぷん! は〜い! わかった!」

     西郷の機転で、雪谷は先程までぶうたれていたのが嘘のように機嫌が良くなった。それに西郷はやれやれと、また呆れるのだった。
     そんな一悶着はあったものの、五反田は仕切り直しと言わんばかりに声を上げる。

    「さて、随分とお待たせしてしまいましたね。早速始めていきましょう。皆さんよろしくお願いします」




     短めの催しの後用意された婚礼料理のフルコースに、四人は舌鼓を打った。あの轟すら満足したのだから、相当な出来だ。尚、その後シェフを買収しようとして断られたのはまた別の話。
     料理の後もプログラムは続く。その前に、少し長めの休憩を挟むことになった。皆が明るい表情をしている中、困った顔の少女が一人。彩葉だ。

    「うう〜、靴擦れしちゃったぁ……」

     履き慣れない靴だったからだろうか、彩葉のかかとは皮がめくれ痛々しい状態になっていた。料理を食べ終えて席を立った後、痛みを感じたと思ったらこれだ。楽しかった気持ちは、一瞬にして悲しい気持ちにすげ変わった。
     流石に何もしない訳にはいかない。しかしこうなると歩くのも一苦労だ。彩葉が悩んでいると、聞き慣れたイヤミな声を耳が拾った。

    「邪魔だ。そんなところでうずくまるな」

     彩葉が振り向けば、そこには轟がいた。偉そうな態度は相変わらずだ。

    「轟さん……。ごめんだけど、今轟さんの嫌味に付き合う元気ないから……」
    「な、なんだと⁉︎ 折角この僕が……! ゔ。いや、今は良い」

     急に口を噤んだかと思えば、轟は何かを押し付ける。それは救急箱だった。彩葉は目を丸くする。

    「え、これって?」
    「何だ、態々説明しないと分からんのか。うずくまっている暇があるなら治せ。この僕にここまでやらせたんだ、高くつくぞ」

     彩葉は驚きのあまり、ぱちぱちと瞬きをする。そして何だかおかしくなって、笑ってしまった。

    「あはは……!」
    「な、何を笑っている! 僕は大真面目に……!」
    「あは、うん。そうだよね。ふふ。それはごめん。でも心配してくれると思ってなかったから……ありがと!」
    「ふん! 別に心配なんぞしていない」

     轟は救急箱を押し付けると、ずかずかと去っていった。心なしか、その足取りは不規則に速かった。
     その後どうなったかと言えば……休憩後のプログラムで雪谷が暴れ、轟が吹っ飛ばされた。それがXBだったかはともかく、エクストリームだったのは間違いない。
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