共依存ウルケイ「なんでウルフって、」
「……なんだ?」
「なんでもない……」
言いかけて黙ったケイゴは、こういう時決まって不機嫌になる。その理由を口にしてやろうかと思ったが、黙っておいた。
(馬鹿だな)
ケイゴがウルフに抱いているものは、強かな劣等感だ。
ケイゴは、ウルフがいないと何も出来ない。狼男の末裔の血は、ケイゴではなく、ウルフにだけ流れていた。
人より優れた体格と能力、精神的余裕が、ケイゴを追い詰める。
「ウルフ、喉渇いた」
「なんか買ってくるか?」
「駄目、ここにいて」
ベッドに寝たまま、立ちあがろうとするウルフの腰に抱きつく。子供の癇癪と同じだ、とケイゴに気付かれないよう溜め息を吐いた。
ウルフは、ケイゴに逆らわない。ケイゴの自由を何よりも尊重する。その従順な態度がケイゴを苛立たせていることも知っていた。
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