Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    uma3_ota

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 🐴 🐯 💋
    POIPOI 56

    uma3_ota

    ☆quiet follow

    プロムの話。🐯×🥗💋さん。

    トラファルガー君はいつでも話題の人だった。彼はハイスクールで一番目立っていると言っても過言ではない。
    何せ見目が良い。すらりと手足が長く均整の取れた体は身長の高さも相まって遠くからでも目を引く。顔も少し目つきが怖いが、整っていて本当にモデルのようだった。その上成績も良いというのだから、非の打ち所がない。
    本人は飄々としていて、誰の告白も受けないというのだからもはやファンクラブまでできそうな勢いだった。

    卒業が間近に迫る頃、話題にあがるのは彼が誰をプロムに誘うのかという事だった。
    彼がでればきっとプロムキングに選ばれる。
    ではそのパートナーは誰が務めるのだろう?普通は男の子から女子を誘うものだけど、トラファルガー君に関してはあまりに本人の興味が無さそうというのと、最後の思い出として、告白とプロムの誘いをかける子が絶えなかった。
    あんな風によく知らない沢山の人に告白なんてされたら嫌になってしまうんじゃないかと感じるけれど、丁寧に一人ずつ断っているようだった。

    ざわつく校内を他所に、トラファルガー君は結局誰にも声をかけていないようだった。もしかしたら参加をしないつもりなのかもしれない。プロムは参加必須ではないしお金もかかるから、大学生活に備えて参加しない子もいるのだ。
    遠目からでも見れたらな…とファンのような気持ちでいたので、少し残念だったが本人の選択に周りがとやかく言う権利はない。

    自分は自分で楽しもうと声をかけてくれた友人の男の子と参加を決めて、当日の準備をした。最近のプロムは昔と比べてだいぶやることが多い、お金がかかるんだねと母は驚いていたけれど、一生に一度の思い出になるから好きにしていいよと笑ってくれた。
    一世一代の晴れ舞台だからと、スクールカースト上位の子なんてリムジンに乗って現れるなんてこともあるくらいのお祭りなのだ。まあ、そこまでやるのは本当に一部の目立ちたがりの子だけだとは思うけど。

    当日、男の子の運転する車に乗って二人でちょっとおしゃれなレストランで楽しくディナーをし、会場に移動した。二人でコサージュを交換したりして、なんだかちょっとドキドキする。通例として決まっている作業のようなものと思っていたけれど、実際にやってみるとときめくものなんだなとふわふわした気持ちで会場についた。

    パートナーと腕を組んで会場に向かう途中、大きなリムジンが止まる。誰だろう?きっとチアリーダーの子かアメフトの目立つ子の誰かだろうな…なんて、何とはなしに見ていたら驚いた。

    車から降りてきたのは、トラファルガー君だったのだ。
    あんなに興味が無さそうにしていたのにしっかりと前髪を後ろになでつけ、体にフィットしたタキシード、胸元に一輪の赤いバラのコサージュ。ネクタイの色は濃紺できっと相手のドレスに合わせたのだろうと思われた。そんな彼は優雅に車から降りると、中に座っている子をエスコートして会場へのカーペットを歩き出した。
    降りてきた子は見覚えのない子で、そういえば他校の子でも参加できるんだったなと思い出した。
    その子はヒールのせいもあるだろうけれど身長の高いトラファルガー君よりも更に身長が高く、短い金色の髪を軽く編み込んでいた。髪に飾られているのは、先程トラファルガー君が胸元に指していたコサージュと同じものだろう。
    胸元の開いた紺色のロングドレスが縫い付けられたスパンコールでキラキラと輝き、肩にかけた黒いファーのコートが揺らめいている。目の離せない美しさだった。

    プロムはパートナー以外とも踊るものだけど、トラファルガー君は彼女の隣に立ち、彼女をうっとりとした目で見つめている。誰が見ても分かる、恋する目。
    ヒールに慣れていないのかよろけそうになる彼女を支え、彼女のために軽食を取り、彼女に甲斐甲斐しくしく寄り添う姿はあまりに普段とのギャップの塊だ。黄色い悲鳴すら上がらず、皆が息を呑む。それくらい目立つ二人だった。

    二人は最後の曲を優雅に踊ったあと、一足先に会場を後にしたようだった。
    彼はプロムキングに選ばれたくなかったのかもしれない。だって、プロムキングは他に選ばれたクイーンと皆の前でダンスをするのだ。他校の彼女はクイーンに選ばれないから、他の子の踊りたくなかったんだろう。

    卒業間近の最後にこんな爆弾を落とすなんて…きっとこの話は、明日から学校で噂…いや、伝説になるんだろう。そう思ったらなんだかとってもおかしくて、会場に来ていた友人と同じ伝説を目撃した記念に乾杯してしまった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💘👍
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works