【さぶれい】追想の記憶「この遷移だと効率が悪いぞ」
三郎の肩越しから腕が伸ばされ、液晶の一部が指差される。タブレットで開いていた設計書の一部を零が指差した。
「セキュリティの観点からここを経由してるんだ」
今度は三郎がタブレットを二本指で拡大し、詳細の部分を指差す。
「それなら、根本的に考える必要があるんじゃねえか」
肩越しに響く重みのある声。何度も聞いているはずなのに、背後から響く声音になぜか懐かしく落ち着くような気持ちが湧いてくる。
「まぁ、そうなるだろうな」
タブレットの画面を切り、零の胸へと体重をかける。上を向けば、三郎とは異なる色のオッドアイと視線があった。
影に覆われマグネタイトのような黒灰色、光彩がきらりと光り八面体のような輝きで三郎を見つめている。そして、メラニン色素の薄いであろう瞳にかかる傷跡。
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