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    kirikirid

    ナギヴァンとフェイキスとネオロマ腐
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    【フェイキス】
    #FKワンドロワンライコラボ
    お題:眠れない夜/お酒
    そういう夜もある。

    #フェイキス
    phacis
    ##フェイキス

    眠れない夜/お酒朝までクラブで遊ぶこともなくなったフェイスと、夜更けまで外で飲酒をしなくなったキースが日付が変わる頃に共用のリビングでバッティングするのはよくあることであった。といってもキースが就寝前の寝酒を呑むためにグラスを傾け、フェイスは就寝前の水をキッチンへ取りに行く際に交わるだけだ。

    「また飲む量増えたんじゃない?」

    フェイスが毎晩、水を取りにくればソファでほろ酔い気分になっているキースがいる。以前は前後不覚になるほど外で飲み二日酔いを引きずる毎日であったが、ディノがウェストセクターに加入してからは目に見えるほどに飲酒の量が減ったのだ。それが最近のキースは飲酒の量が増えている、とフェイスは感じている。

    「ん~…これは寝る前の酒だからなぁ。なんつうーの、まぁこれを飲むとよく眠れるわけだ」
    「前は飲んでなかったよね。本当の理由ってディノにも、俺にも、言えないこと?」

    キースの不調は飲酒量でわかる。キースが胸の内に悩みや不安を抱えれば、同じ分だけビールの缶とボトルが積まれていく。入所してからの短い付き合いだが、それぐらいキースはわかりやすいのだ。フェイスはキースの横に座り、肩へ寄りかかった。キースと過ごした時間はけして長くはない。それども、今のキースのことなら誰よりもわかっている自信はある。恋人なのだから、自分にだけは頼ってほしい。例え、ランクがルーキーでも、解決策が見つからなくとも、恋人という理由だけでキースには頼ってほしかった。
    さらりとした濡羽色の髪がフェイスの表情を隠しキースから見えないが、肩から不安そうな感情が伝わってくるのがわかる。それほどまでに、心配をさせてしまったのかと焦る一方で本当の理由は、できれば話したくない。このまま寝酒で押し切るか、もう少しだけグラスを傾け、アルコールの力を借りて素直に事情を話すか。

    「…俺じゃぁ頼りない?」

    フェイスの手の中で水のペットボトルが小さな悲鳴をあげた。年下の恋人にこれだけの不安を抱かせてしまえば口を紡ぐ理由の何と小さなことか。ローテーブルに手を伸ばして汗をかいたグラスに口をつける。八割ほどが炭酸水、残りの二割がウィスキー、時間をかけて味わったせいか氷も溶けている。

    「…お前、寝る前に毎回、水を取りにくるだろ」

    ぽつりとへの字に曲がった口から落ちる言葉にフェイスが小さく頷く。最近のフェイスは朝までクラブで遊ぶこともなくなり、夜の空いた時間はジムで運動をしていた。その後にシャワーを浴び、就寝前にペットボトルを一本キッチンに取りに行く。これが夜のルーティンとなっていた。

    「そんで、お前、そのまま部屋に戻るだろ…」

    拗ねたような口調に、ちびちびとグラスのお酒を流しこむキース。自分が抱いていた不安は杞憂だとフェイスの口角が上がる。
    同じセクターということもあり、キースと会っていない訳ではない。ランチを共にし、休憩中には仕事仲間以上の親密さを伴い会話を楽しむ。それでも、思い返せば恋人同士の触れ合いの時間は長くはなかった。

    「アハ、それって寂しかったってこと?」

    それは、普段のキースからは想像できないような飲酒理由。フェイスが想像していたよりも、そのような蜜事に浮足立つような性格だったらしい。過去の彼女たちに似たようなことを言われてもなんとも思わなかったが、キースからであれば話は別だ。自分と会えなくて寂しいと、この孤独に慣れたメンターは薄いアルコールで寂しさを紛らわしている。
    ぐいっと、フェイスの楽しそうな表情が近づく。弧を描く唇に本音を曝け出せとキースに詰め寄るのだ。

    「そうは、言ってねぇ…」

    消えかけていく語尾に素直になりなよ、と合わさる唇。いつもの乾いた唇は水割りで湿っていた。

    「今日は久々に夜更かししようかな。おチビちゃんに怒られない程度にね」

    まだ時計の針は真上から少し傾いた程度だ。余っていたグラスに氷と少量のウィスキーに手持ちの水を注ぎ込み、キースのグラスに合わせればキンッと静かな部屋に鳴り響く。
    寝酒というには薄いアルコールに酔いはまだこない。
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