構って欲しくて「ミリーナ!どこ!……もう、どこ行っちゃったのよ」
恋人を探すこと30分。わたしはもう疲れてしまって、道の横に避けてしゃがみこんだ。
この島で育ったわたしと違い、恋人のミリーナは移住してきて時間がたっていない。
町の中は道が要り組んでいてわかりにくいので、たまに住人でも、今いる場所がわからなくなるというのに、わたしは恋人と暮らすこれからが楽しみすぎて、ついはしゃいでしまった。
その結果がこれだ。恋人の迷子。
特別治安が悪いわけではないけれど、それでも、かわいい恋人を一人にするのは不安で仕方がない。
息を整え、また探そうと顔を上げると、ちょうど目の前に膝をついた男がいた。
「レディ、どうかしましたか?」
差し出された白いハンカチ。黒いスーツに身を包んだ金髪の男。
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