【知凛】海鳴り「あっ知念やぁ!」
「マジムン! マジムン!」
「目ぇ合わさんけー!石になりゆんどー!」
ああ、まただ。凛の頭にカッと血が上って、激昂は考えるより先に言葉となって、気が付けば口から飛び出していた。
「グラァッ! ぬーあびちょーがよッ! 言いたい事あるんならこっち来て正々堂々と知念にあびれやッ! くぬフリムンがッ」
よくある子供らしい悪ふざけ、大人が見ればせいぜいその程度の事と思うかも知れない。だけど遠くから浴びせられる揶揄いの言葉――奴らは絶対近くでは言わない――、寛に投げつけられる言葉の数々は、凛の目には無数の針に見えた。寛は何を言われたところで表情を崩さない。それでも針は確実に寛の心に刺さっているように凛には思えて、同時に凛の心までもがチクチクと痛んで、いつだって言い返さずにはいられなかった。
2834