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    act243129527

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    act243129527

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    ほぼほぼヒスムルのグレムルのつもりで書いてた悪魔パロ
    まさかの中編

    悪魔パロ・中……いつも、同じ夢を見る。

    俺はあの日、部屋に入った時に、あいつと出会った。

    そうして、何も分からないままに家中のバトラーが一人残らず殺されて行った。

    でも、確実に何かがおかしい気がしていた。
    記憶の空白があるような気がするんだ。
    忘れられる筈の無い事を、忘れているような……

    「……」

    その記憶をあいつに奪われたのなら、取り戻すまでは終われない。

    そして……あのクソッタレな犬を八つ裂きにしなければ……俺の気は治らない。

    隣で魘されているこの羊も……全部の悪魔を狩るまでは……終われない。


    ……契約する羽目になってから何日、何ヶ月経っただろうか。

    最近、自分の考えが凶悪になって来ているような気がして、密かに怯えている。

    どの部分をどのぐらい痛め付ければより悪魔が苦しむか、痛がるかが分かるようになって来た。

    そしてその苦しむ声に……喜悦を覚えるようになった。

    悪魔が苦しむのは良い事だ。それは間違い無い。
    だが……本当にこのまま喜悦に浸ってしまって良いのだろうかと、我に帰る時がある。
    その時、全てが恐ろしく感じて……剣を握るのが怖くなる。

    その剣も、今では黒ずんでいるように見えて毎日磨くようになった。

    磨いても、磨いても、染みは剣の最深部に到達しているのか落ちない。

    「………」

    俺も……こんな風に、黒くなっているのだろう。

    剣が輝きを取り戻さない事を悟ると……俺は剣を磨くのをやめた。

    怖がっていてももう仕方が無いと悟る程に……自分は戻れない所まで落ちた事が分かったから。

    いつかあの犬と、羊の首を刈る事を考えながら……剣を振るう事にした。



    「……」

    グレゴールがより下級悪魔を狩るようになった事で色々と弊害が生じていた。

    「……グレゴール。話がある。」
    「何だよ。」
    「……負傷を避ける努力をしろ。」

    まず、吹っ飛んだ体のパーツを回収(捕食)する事で胃がもたれていた。
    四つあった頃でもこんなには食べなかったし、そもそも一つの胃だけでは荷が重いのだ。

    「どうでも良いだろ。どうせすぐ治せるんだから。」
    「どうでも良かったら話などしていない。そもそも……お前の体の修復にはエネルギーが必要なんだ。」
    「……もうガス欠になったって?」
    「……そうなってもおかしくない状況だ。」

    次にエネルギー切れの危険だ。

    元々胃が減った事で保有しているエネルギーも少なくなっていたのだ。
    普段なら滅多に消費しないのだが、今回負傷した契約者の治癒を短いスパンで何度も行っている事でかなりのエネルギーを消耗していた。

    「誰かに貰いに行ったらどうだ?」
    「……貰いに行かなくともその内元の水準に戻る物だ。……お前の四肢が吹っ飛ばなければ。」
    「契約したのはお前だろ?その程度の事で話が違うって言う気か?」
    「…………」

    正直、話が違うと言いたい気持ちはあった。
    だがそれを言うとグレゴールの予想通りになってしまうので溜め息を吐いて言葉を飲み込んだ。

    「……当分は狩りを休止しろ。」
    「な……」
    「そうでなければお前の最後の一本の腕を捥がなければならなくなる。捥がれたくないのなら大人しくしていろ。」

    私はそれだけ言って眠りについた。

    そうして4時間眠った頃だった。

    夜中に目を覚ますと、隣にグレゴールが居ない事に気付いた。

    「………、」

    サァッと血の気が引いて、飛び起きて服を着るとそのまま外まで駆け出した。

    私は路地を駆け抜けた末に、甲高い狂笑を聞き付けてそちらへ向かった。

    「ああ、見て!貴方のお陰でこんなに綺麗になったよ!」
    「……っ……、ぐ……こ、の……」
    「………」

    見えたのは……鮮血を体中に浴びて嬉しそうに足踏みをしている、赤い服を身に纏った女の悪魔だった。
    格好や所々にあしらわれている骨の意匠、そして何より足下の赤い靴……靴の悪魔で間違い無い。

    私も一度会った事がある相手だが……あまり会いたくない悪魔の一人だった。

    無謀にもそれを狩ろうとして返り討ちに遭ったであろうグレゴールが、血溜まりの上で悪魔を睨みつけていた。

    その腹には一歩間違えれば即死だったであろう深い傷が付いていた。

    「……あれえ?さっきは居なかった筈なのに誰か居るね?」

    靴の悪魔がこちらを見て不思議そうに言った。

    「……私だ。羊の悪魔であるムルソーだ。……前に、会った事がある筈だが。」
    「あ〜〜、確か胃を取られてた……」
    「……残念だが、その認識で合っている。」
    「それで?どうしたの?あっ!もしかしてこのネズミが欲しいの?あげるよ〜もう用済みだし。」
    「……助かる。」

    あまり会いたくない相手ではあったが今はグレゴールの鮮血を浴びた事で機嫌を良くしている。
    こう言う時は話が通じるのでその点は良かった。

    ひとまずグレゴールの傷を癒してから彼女に向き直った。

    「……私の契約者がすまなかった。怪我は無いか?」
    「全然平気〜。もし付いてたなら一発で殺してたよ。」
    「……それは……良かった。」

    色々な意味で助かった。

    「二度とこんな事の無いようにする。」
    「私は別に良いんだけどね〜。じゃ、ばいば〜い。」

    踊るように歩いて去って行く彼女を見て、漸く息が出来たような感覚がした。

    「……もう二度と一人で行動するな。」
    「……何、俺の為みたいなツラして言って来てんだよ……?」
    「……」
    「全部、自分の為だろうが。お前も俺も……」
    「……ハァ……その不安定さ……そろそろ目障りなのだがな……」
    「なら殺せば良いだろうが。お前なら簡単にやれる筈だろ?」
    「……」

    私は……何故、この男を生かしているのだろうか。

    どうせ、この男にヒースクリフは殺せないし、殺させるつもりも無いのだ。

    ただ、今よりも魂を美味く出来ると言うだけの事で、私はこの男に首輪を掛けていた。

    私は……どうして、この男を……

    「……、」

    この男と出会った日に嗅いだ、残り香を思い出した。
    いや、その残り香は今正に、この男から発されていた。

    そんな男を……私は、隣に寝かせていたのだ。

    私は……無意識の内に、ヒースクリフを追い求めていたのか。
    残り香に、惹きつけられていたのか。

    「………」

    そう思うと、途端に恐ろしくなって来て、私はふらふらと歩き出した。

    「……チッ……」

    この荒々しさも、ヒースクリフに似ているような気がして……気が気ではなかった。



    「……」

    近頃、私はたったの数行で挫折する程読書に集中出来ずに居た。

    最近……何だか気が散るのだ。
    何か起こるような予感がして、ずっとそれに気を取られてしまっている。

    ……何なのだろうか、この感覚は。

    「……、」

    そこではっと我に帰った。

    委員会の悪魔がテレパシーで招集令を出したのだ。

    私は立ち上がり、グレゴールが眠っているのを確認してから、爪で空間を裂いて門を開いた。

    「……」

    気の進まないままに、私は門の中に入った。


    まず見えたのは赤い包帯だった。

    揺れる包帯の先を見ると……黒い狼が、縛られていた。

    「……ヒースクリフ……」

    獣の姿になっているのを見るに、かなり暴れたのだろう。

    その場には心眼の悪魔であるファウストと、包帯の悪魔であるウーティスが居合わせていた。

    「……随分手こずらされたよ。しかし……これで漸く話が出来るな。」

    ウーティスは私にそう言ってから縛っているヒースクリフを締め上げた。

    ヒースクリフの呻き声に、震えそうになるのを堪えるので精一杯だった。

    「ァ……かはっ……は……ッ、はっ……」

    黒い煙を上げながら半獣の姿になったヒースクリフは、あの日よりも髪が乱雑に伸びて……服を着込んでいた。

    「……随分、変わったな。昔のお前は服を着たがらなかったのに。」

    そう声を掛けてみると、長い髪の隙間から紫色の片目が覗いた。

    ……あの日……抵抗した時に、やむを得ず片目を潰してしまったのだ。

    「……あんたこそ……何シケたツラしてんだよ……」
    「……」

    私は目を合わせられなくなって、下を向いた。

    「……欲しがってた魂は……どうなった……?それさえ手に入れば胃を返してくれる約束だった筈だ。」
    「……は……、約束ってな……」

    ヒースクリフは口角を上げて……また、下げた。

    「……あんた、なんで俺が約束守るって思ってんだよ……」
    「……、」
    「……待て、魂とは何の話だ?」

    ウーティスがヒースクリフを締め上げてから私とファウストを交互に見た。

    「エドガー家に嫁入りした人間の魂の事のようですね。……キャサリンと言いましたか。」

    その言葉にピクリとヒースクリフが反応した。

    「……エドガー……」

    グレゴールが指輪を付けていた跡があったと言っていたのはやはりそう言う事だったのだろう。

    「……ヒースクリフ。お前は……グレゴールから何を奪ったんだ……?」
    「グレゴール……?ああ……あいつの事か……」

    ヒースクリフは口角を上げて、言った。

    「記憶だよ……あいつは……俺が知らねえキャサリンの記憶を……持ってたからな……」
    「……そう言う……事か……」

    ……そんな物の為に……お前は皆を敵に回して……私から胃を奪ったのか。

    「……一連の動機は分かりました。本題に入りましょう。」

    ファウストが燃える羽根のペンで記録を書きながら言った。

    「奪った物を返す時間です。ヒースクリフ。」
    「……、」

    ヒースクリフが一瞬顔を引き攣らせた。
    だが……嫌がっている訳ではないようだった。

    「……ムルソーさんからは三つの胃、そして人間から記憶を奪って回っていたようですが。」
    「……胃なんか、勝手に引っこ抜きゃ良いだろ……」
    「……?お前、まさか……」

    ウーティスが目を見張ると、ヒースクリフが顔を逸らした。

    「……返す方法……分かんねえんだよ……」
    「………」

    私は……何も考えられなかった。

    「……私は……あの女よりも……」

    そう呟くと、ファウストがこちらに歩み寄って来た。

    「……抽出しますか?移植に関しては問題無いでしょう。」
    「……いや……いい……」
    「……本当に言っているのか?」
    「……腸を掻き回されるのがどれだけ痛いのか……私が一番知っている……」

    その言葉に、二人は黙り込んだ。

    「ッ……あんた、それで良いのかよ⁉︎俺の腹割いて取り戻せば良いじゃねえか‼︎」
    「……」

    私は……そんな気が、起こらなかった。

    「……お前は他に奪った物を返しに行くと良い……私は……あの女の記憶を噛み砕いた胃など、要らない。」
    「……」
    「……その代わり……契約した人間に、お前を引き渡す。お前を殺す為だけに人生を棒に振った男だ。……誰だか、分かるだろう。」

    ヒースクリフが顔を歪めた。

    「……ムルソーさんの求刑、聞き入れました。では……」

    そこでファウストは目を見開き、私の方を見た。

    「……どうした……?」
    「何かが来ます。ウーティスさん、結界を……」
    「分かった。」

    包帯が周囲に生成された時、空間に裂け目が見えた。
    私がここへ来た時と同じ裂け目だ。

    「同じ悪魔では……」

    私がそう問いかけようとした瞬間の事だった。

    黒い大きな影が、私達の間を切るように飛んで行った。

    「……っ!」

    ウーティスが張っていた包帯で黒い影を縛り上げると、漸くその姿を視認出来た。

    「……グレゴール……?」

    だが、おかしかった。

    人間がどうやって門を通じてここまで来たのか。
    どうやってこんな速さで動いたのか。

    そして……グレゴールを包んでいる黒い瘴気は……何だ……?

    「おいっ!この人間……悪魔になりかけているぞ!一体何をした⁉︎」

    ウーティスの問いに、私はハッとした。

    「……だが……おかしい……悪魔をどれ程狩った所で、こんな事になる筈は……」
    「……狩る側の魂は、どうなのでしょう。」
    「……、」
    「彼は……不安定ではありませんでしたか?隙があるのなら、そこに狩った悪魔の残滓が染み付いてもおかしくありません。」
    「………っ、」

    その時。

    ブチブチと音が聞こえ、そちらを見るとグレゴールが包帯を噛みちぎっていた。
    その包帯が飲み込まれるのを見て、私は咄嗟にヒースクリフの方へ走っていた。

    「……はぁ……クソ……っ、」

    包帯を全て取るのは難しかったのか、グレゴールは悪態を吐いた。

    包帯がギチギチと音を立ててグレゴールを締め付けた時だった。

    グレゴールを中心に黒い瘴気が爆ぜて、爆発に等しい衝撃がその場の全員を吹き飛ばした。

    「……ぐ……ぅ……」

    痺れる体をどうにか動かすと、縛られたまま転がっているヒースクリフがすぐ側に見えた。

    「ヒース、クリフ……平気か……?」
    「……ッ……あんた……人の心配してる場合か……?そもそも……なんで、俺の心配してんだよ……」

    黒い瘴気がその場に立ち込めていた。

    視界が悪く、動いている物以外は見えづらい。

    私は這いずってヒースクリフの側に付いた。

    「……これは……予定に無かった襲撃だ……そもそも、お前への復讐を成し遂げさせる事自体……私は、考えていなかった。」
    「……」
    「……どの道、私が責任を取らなければならない事だ。それだけの事……」

    その時。
    地響きのような音が鳴り響いて、黒い何かが見えた。
    それは根のように地面に張り巡らされているようだった。

    「ッ……!」

    咄嗟に獣の姿になり、ヒースクリフを咥えて持ち上げた。

    脚が長い事もあって、ヒースクリフに根が届かずには済んだ。

    「ん……ッ、」

    だが、脚に張り付いた根が問題だった。

    「ぅ……っ、」

    ぐらりと視界が揺れ、崩れ落ちそうになる。

    (……エネルギーが……吸い取られている……)

    どうにか根から脚を引き抜こうとするが、黒い根は細長い脚に絡み付いて話そうとしなかった。

    「ぅうっ……」

    元の姿に戻り、その場に崩れ落ちると……

    「……やっぱりあんた……弱いな。」
    「ぐぅッ!」

    手の甲に細い剣が突き立てられ、地面に縫い付けられた。

    「オモチャには丁度良いだろうな……一丁前にしぶとくて……実際は大した事無いんだから。」
    「ッ……グレゴール……」

    手の甲から剣が引き抜かれ、今度は背中に突き刺される。

    「その角……へし折ったらどんだけ痛いんだ?ずっと気になってたんだけど。」
    「ッ……」

    角に手が触れる感覚がして思わず頭をめちゃくちゃに動かすが、手は角を離さなかった。

    「……そんだけ抵抗するって事は痛いって事だな?ああ……ならやる必要があるな……」
    「ッ……、」

    私が必死に踠いていると、ヒースクリフがこちらに駆け寄って来た。

    「……」

    グレゴールは何も言わずに、ヒースクリフの周囲にある根を動かしてヒースクリフを押さえ込んだ。

    「アイツがあんな必死そうにお前を助けに来るって事は……お前を見せしめにしなきゃなんねえって事だな。」
    「ッ……、」
    「テメェ……ッ‼︎調子こきやがって……‼︎」
    「存分に吠えてろ。お前の目の前でこいつを嬲り殺してやるからな。」

    角に掛けられた手に力が込められた気配を感じ取った時、私は痛みに身構えて手の甲を噛んで、目を閉じた。
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