楓可不『秋宵の攻防』 二人目の体重を受け止めたベッドが少し軋んだ音を立てる。可不可よりも少し広い背中を抱き寄せ、湿り気を帯びた首元に顔を埋めると爽やかで少し甘いボディーソープが香る。買い物に出かけた時に一緒に選んだ、お揃いのボディーソープの奥に見つけた楓自身の匂い。それを確かめるように深く息を吸うと、頬に触れた脈が少し速くなったような気がした。
触れたところから湯上がりの温もりが部屋着越しに伝わってくる。普段から可不可よりも楓の方が少し体温が高い。楓の温もりが移り、体温が溶け合うのが心地よくて、もっと楓の近くに行きたくて、背中に回した手に力を込めた。可不可が乗り上げた時にはびくともしなかった太腿が居心地悪そうに身動いで、ようやく可不可の背にも楓の手が触れる。遠慮がちに彷徨っていた掌が、背中を上下に撫で始めたことであやされそうな気配を感じて、可不可は触れたままだった首筋に柔く吸いついた。
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