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    mimisan_trpg

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    俺が見たいから書いた続きその2、永遠に飯テロ小話してる

    2日目は三食をとにかく摂れふと物音に意識が浮上する、希はすっと目を開けると目の前で寝ていたはずの黒龍が居ない事に気付く。

    「せん、ぱい…?」

    時刻を見れば午前5時ぐらいで人々が起きて行動するには少し早すぎる時間だ。
    しん、と静まり返る他人の部屋はなんとなく落ち着かず改めてこの同居生活をしてるのだと理解した。
    起きようかと思ったが布団の暖かさと先程まで居た温もりが心地よくて希は静かに二度寝に入った。

    再び目を開ければ美味しそうな匂いとカチャカチャと音が聞こえる、身体を起こせば黒龍が朝食を並べているのが見えた。
    それを眺めていれば黒龍と目がパチリと合う。

    「なんだ、俺が起こす前に起きたか」

    「おはようございます、先輩」

    「……おはよう、さっさと席につけ」

    律儀に挨拶を返す黒龍に少しだけむず痒さを感じつつも促されたように席につく。
    朝食はどうやら和食のようで白米に味噌汁、ほうれん草のおひたし、メインは鱈の煮付けだ。
    思いの外しっかりした朝食に完食できるのだろうかと希は思っていると黒龍は口を開く。

    「食えなかった分は昼に回せば良い」

    「お気遣い、ありがとうございます……」

    「世話がかかる新人だ、では」

    「「いただきます」」

    二人が手を合わせて言えば各々箸を持ち、食事に手をつける。
    前日もだが、黒龍は黙々とパクパク食べ進める。
    決してがっつく訳ではなく一口一口をしっかり味わうように食べる先輩の姿に希は「こういうところは丁寧だよなぁ」と思い味噌汁に口をつける。
    味噌汁は大根、人参、じゃがいもと具沢山ではあるがどれも食べ易いように一口サイズになっていてこの味噌汁だけでも満足感を得られる一品だった。
    おひたしも決して胃に負担をかけるような味ではなく優しいがしっかりとした味付けでご飯によく合うと咀嚼しながら思う。
    鱈の煮付けは箸で簡単に解れるぐらい柔らかく白身魚のさっぱりとした風味がほっとする味だ。

    「朝からこんな沢山作って大変じゃないですか?」

    「別に苦ではない、最近は便利なものも増えているしな」

    チラリと黒龍が向けた視線に希も後を追うと圧力鍋が見えた、煮付けはどうやら圧力鍋を使ったのかと推測出来た。
    しかしそれでもいくら食に疎い希でも料理は大変だというぐらいはなんとなく分かる。

    「それでもこれだけ揃えるのは凄いですよ」

    「……そう思うのなら食え」

    黒龍は淡々と答えながら残り少ないご飯を食べきった。
    一方の希はまだ半分程度残っており少し焦りながらも食べ進めるが元々少食の希には多かったようで4分の1を残してしまった。
    残ってしまった分は「勿体ない」と言って黒龍が食べきった。

    「すみません、美味しかったんですがお腹いっぱいで……」

    「別に気にしてない、多少食えたならそれで良い」

    然程気にしてない黒龍は残った味噌汁を魔法瓶に入れ蓋を閉めれば、炊飯器で残ったご飯を使いおにぎりを握り始めた。
    あっという間に出来た握り飯と味噌汁を鱗模様の巾着に入れ口を締めれば希の目の前に置く。

    「今日の昼飯だ、お前は着替えて準備できたら先に行って勤務前の準備をしろ。俺は自分の分を作ったら後で行く」

    「な、何から何までありがとうございます……」

    未だ短い付き合いではあるが、黒龍は言動に多少の問題があれど職務やこうした面倒見は良く決して希を見捨てないのがなんとも言えない不思議な気持ちになる。
    ……その分問題の言動がより際立つのだが、と希は心の中だけで思う事にして有り難く巾着を受け取り、着替えや歯磨きを済ませ、一足先に職場へ向かう為、部屋を後にする。

    慌ただしい新人の姿を黒龍は言葉を出さずに横目で眺めつつ自身の準備を進めた。

    ーーーーーーーーーーーーーーーーー

    今日は外回りもなく資料整理だったので黙々と二人は纏めている。
    時折黒龍の方から「チッ、誰だ分類外の資料を挟んだのは」と舌打ちと共に聞こえてくるがそれはそれとして平和な方だと希は思う事にした。
    そうしてあっという間に昼を迎え、作業もキリのいいところで上げ用意された弁当を広げる。

    「「いただきます」」

    そうして希は食べ終わった弁当を片付けていると、黒龍からポンと何か投げられるように手渡されたそれをキャッチする。

    「うわっ!?な、なんですかいきなり!」

    「それでは栄養が偏る、後でも良いから食っておけ」

    手渡されたそれを見ると美味しそうなマフィンだった、匂いからしてバナナマフィンだろうか、表面にはスライスアーモンドが散りばめられていて素人目からみても美味しそうだとわかるものだった。
    黒龍は話は終わったとばかりに希に視線を向ける事なく資料整理を再開している。
    そして希には理解できる、これは照れ隠しでもなんでもなくて「そうすべきだからそうした、それが終わったので仕事に戻った」だけなのだと。
    黒龍の他人に対する感情はまだ理解できないが彼の他人に対するスタンスの理解がまた一つ深まったなとしみじみ思えば、「休憩時間は終わったのに呑気なものだな」と機嫌を損ねそうな声が飛んできたので慌てて希も作業に戻る。

    「(あぁ、でもまだ2日目だというのに、少しだけご飯に期待しちゃってるのかも)」

    食に興味を持たなかったが滅多にないであろう上司の手料理フルコースに早くも胃袋を掴まれてしまったような感覚を抱いて晩御飯は何を作るのだろうかと希は思考しながら職務へ戻った。
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