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    mimisan_trpg

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    mimisan_trpg

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    彼岸ちゃんと黒龍が誰かを弔って話してるだけ

    それでも私達は殺し合う「Assault/攻撃干渉──百閃ッ!」


    剣戟が繰り返され干渉者と成り果てた者は崩れ去る。
    以前適応されぬ重い身体を無理やり動かして戦い、やっと一息つく事が出来た。


    「はぁ、はぁ……やっと終わった……」


    敵の気配も無し、静かになった戦場で少女は息を吐く。
    尻餅つくように座る姿から彼女の疲弊具合が見て取れるだろう。
    殺し合いなんてただの一般人が慣れていいものではないと言い聞かせるが慣れとは恐ろしいものでいつしか殺し合いは日常的な出来事になった事を少女は憂いた。


    「相変わらず、スロースターターも良い所だな彼岸」

    「五月蝿い…お前のような戦闘センスありまくりな奴と一緒にしないで」


    砂利を踏む音が聞こえたがそれは敵ではなく慣れた気配だと感じ取り、忌々しい顔で振り返れば赤い瞳がこちらを見ている。


    「未適応ながら毎回良くやると思ってな、これは褒め言葉のつもりなんだが」


    赤い瞳の男──黒龍は面白そうに笑って彼女を見下ろす。
    たかが人間、されど執念で殆ど人間を捨てた奴が生き残る為に、願いを叶える為に刀を振い続けるその姿に驚嘆さえ覚える。
    そんな黒龍の態度に名を呼ばれた少女──彼岸は顔を顰めたまま黒龍を睨み返した。


    「皮肉のつもりなら帰って欲しいんだけど、これから後始末もあるんだし」

    「悲しい事を言うじゃないか、俺にも手伝わせてくれ」


    男は以前と笑ったまま歩みを進め少女との距離を縮め、もはや見下ろすというよりは真下を見るといった感じになり、彼岸もまた真上を見る状態にならざるを得なかった。
    しかしそれよりも彼岸は「手伝う」という言葉に「はぁ?」と言いだけな顔を浮かべる。


    「あんたがそんな殊勝な事言い出すとかあり得ないんだけど」

    「そういう気分だと言えば納得するか?」

    「………するわね、あんたそういう所あるし」


    気分、気まぐれ、どうしてこう人から外れたものはそういった不確定事象を起こしたがるのかと彼岸は呆れた。
    疲労困憊である身体に鞭打ちながら立ち上がれば、戦場となったこの場で亡くなった現地の人を探し、身なりを整えてやり、埋葬する。
    黒龍も一度一連の流れを見た後同じように死体を埋葬し始めた。


    「黒龍、あんたこの国の弔い方って…」

    「俺が知る訳ないだろ」

    「だよね、じゃあ慣れた方法でやるしかないか」

    彼岸は困ったように笑い、埋葬された簡素な墓の前で手を合わせる。
    黒龍は弔いこそしないが彼岸の様子をじっと見守っていた。

    「終わったか?」

    「───ん、ありがとう黒龍」


    弔いが終わり彼岸は軽く衣服に着いた土埃を払いながら立ち上がる。
    振り返った彼女の顔は、先程まで戦場で戦っていた怪物ではなく何処にでも居そうな少女の顔だと黒龍は静かに思う。
    そう、ただの人間なのだ。
    ただの人間が、執着と復讐心だけで此処までの領域まできたのだ。
    だからこそ、己が終わるとしたら彼女の手が良いと黒龍は考えている。
    『悪しき鬼』という悪役が『ただの少女』の形をした怪物に殺されたい。
    そんな思考は思えど口にはしない、いや口にせずとも相手は理解してくれるのだから。


    「……何よ、そんなジロジロと見て」

    「さてな、自分で当ててみろ」

    「なんでそんな事しなきゃならないのよ、絶対に嫌」


    いーっと露骨に嫌そうに顔を歪める彼岸に黒龍は思わず笑う。
    気まぐれに彼女の弔いに付き合った甲斐がある、そう感じたのだ。


    「ちょっと笑いすぎ、ああもう帰る!」

    「クク…そう拗ねるな、今の俺は機嫌が良い。食い物でも奢ってやる」

    「うっ……そ、それは…た、食べ…」

    「ガキめ」

    「う、うるせ〜!!人間お腹減る物だし美味しいもの食べたいんですぅ〜!!!」


    ぎゃーすかと騒ぎ出した隣の少女が面白おかしくて今度こそ腹を抱えて笑う黒龍に彼岸は更に猛抗議をした。
    殺し合う、辛うじて味方の関係。
    そんな奇妙奇天烈なバランスで保たれた縁はまだその時ではないと待っている。
    いつか、どちらかが死ぬ時、死んだ方が救われるなんて───笑えないなと二人は心の片隅に思うのだ。
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