徒花の君へ【壱 崩落】
――主が死んだ。
すぐ帰るから、と言って護衛も無しに万屋へ向かう道中で暴れ馬に撥ねられた。
刀である僕たちと違って、人の身体は手入れでは元に戻らない。
乱れた髪も、土に染みた鮮血も、折れた幾つもの骨も、何一つ。
人の寿命は短いとわかっていた。それでも、あまりに早過ぎた。
実を成せず、雨に打たれて志半ばで散ってゆく。
――徒花のように、呆気なく。
◇◆◇◆
「それでは、これにて説明は以上となります。
他の本丸への異動を希望する方は後程こちらへ、
刀解を希望する方は所定の場所へ移ってください。」
管狐と政府の役人の指示に従って、数多の刀剣男士が本丸を駆けていた。
それも束の間、太陽が傾いて影が伸びてゆくうちに、一人また一人と声が消えてゆく。
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