愛というにはあまりにもぽた、ぽたと水が落ちる音がする。深夜の館にてガンジは起きていた。正確には眠れていなかった。躁鬱気質の彼は少し前から鬱の状態になっていた。
眠れば悪夢をみてしまう今は出来る限り寝ないで起きていたい、そう思い部屋に付いている洗面器で顔を洗った。顔全体と少しばかり前髪が濡れて、視界がはっきりする。目の前の鏡に映った自分が悪魔に見えて、吐いた。ガラガラと排水溝に水だの吐瀉物だのが流れる。泣きたくもないのに涙が止まらない。ずるずると滑り落ちるようにガンジは座り込んだ。震えが止まらない。
「グプタ、起きてるのか?」
扉の外から声が聞こえた。
ナワーブはガンジの敬愛する先輩だった。この荘園では狂ったゲームに参加する以外のことは出来ず、招待された各々は自分の部屋に引きこもるばかりだった。ガンジが初めてきた時も、案内を買ってでたのは庭師の少女ばかりで、そのほかはゲームでしかあったことのない者ばかりだった。その中でもナワーブはガンジに優しくしてくれた。ゲームで会ってからというもの、故郷が近い馴染みなのかなにかと世話をやいてくれたのであった。
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