誰にも言えない「……ライディン」
小声で唱えると僅かな稲光が指先に落ちてバーンの肌を伝い流れていく。
仰向けの大魔王の胸に雷撃を纏った指を這わせると、微かな呻き声を上げて無防備に喉を反らせた。勇者しか使えない魔法をいかがわしい行為に使うなんて、じいちゃんにもレオナにもポップにも……誰にも言えない。後ろめたくなるなら使わなければ良いのに。でも知ってしまった。
「罪悪感か、聖なる技をこのような事に使うなど貴様の師が知ったらどのような顔をするか。見ものだな」
バーンは楽しくてたまらないと言いたそうな顔で笑った。人の困った顔を笑うなんて悪趣味だ。
「……その聖なる呪文で気持ち良くなっている癖に」
「クク、貴様のその顔も悦いぞ」
鋭い爪が生えた指が頬に触れた瞬間、思わずまた雷撃を流してしまった。頬に食い込む爪の痛さが、先生からの罰に思えた。大きな手のひらを剥ぎ取り、喘ぐバーンを組み敷いた。魔族め。おれを狂わせるな。