はちゃめちゃ燭へしらんど_鬼ごっこ編ざわめきと肌に当たるむず痒さで意識が浮上すると、昨晩眠りについた自室ではなく広大な芝生の上に横たわっていた。すぐ近くには僕の本丸の長谷部くんもポカンとした表情で座り込んでいた。
「長谷部くん」
「燭台切…。…ここは、どこだ?」
「さぁ。僕にもさっぱり。少なくとも過去に飛ばされてないことだけはわかるかな」
僕たちがいる芝生の先には円形上に2m程の高さの囲いがあり、その上にはスタンド席が幾層か連なっていた。さらにその頭上の4方向には巨大モニターが設置されていた。スタンドは満席で埋まっていて、何かの術の作用なのか個々の判別はできない。しかし、ざわめきや時折発せられる甲高い声で女性が多いことは推測された。
芝生のスペースには僕たちの本丸以外の燭台切光忠とへし切長谷部が数十組いる。みんな僕らと同じように怪訝そうに周りを見渡していた。その中に、寄り添うように肩を抱いている僕たちがいた。やけに距離感が近いなと観察していたら目が合った。警戒している表情を緩めて軽く手を振ったのはお隣の本丸の二振りだった。
(中略)
芝生の片側に僕たち燭台切光忠が、その反対側に長谷部くんたちは集められた。
派手な効果音と共に巨大モニターに極めた燭台切光忠とへし切長谷部の姿が映し出された。何が起こるのか固唾をのむ僕らに二振りはにこやかに言い放つ。
『ようこそ!はちゃめちゃ燭へしらんどへ!!』
途端、会場はスタンドから発せられた黄色い悲鳴に包まれた。
(中略)
『ここに集まった燭台切光忠がへし切長谷部を捕まえる余興だ』
『つまりは鬼ごっこだね。でもただの鬼ごっこじゃないよ。鬼と捕まえた長谷部くんでカップルが成立からね』
『カップルになった二振りは別室に移動し、そこで粘膜への接触をしないと部屋からは出られない』
粘膜の…接触?まさかの条件に悪い想像をする。
『まぁ、解りやすいのはコレだな』
しれっとした表情で極べくんは親指と人差し指で輪を作り、極めた僕はニコニコしながらその輪に人差し指を出入りさせてる。
想像通りの最悪な解放条件とあからさまな下品なサインに、僕たちは戸惑いざわめきや非難の怒号を上げるが、スタンドからの悲鳴と歓声でかき消されてしまった。
「それって僕の長谷部くんが他の僕と結ばれてしまうかもしれないっていうこと…?」
お隣の本丸の僕が青ざめた表情でそう呟いた。
(以下略)