ナタンポその頬を、涙がつ会うことを珍しいなどと思ってしまった。人間なのだから、泣く時は泣くだろう。
だが、確かにサンポ・コースキという男が涙を流す姿を、今までナターシャは想像出来ずにいた。
診療所の物置の中でその答えが、目の前にいる。
「まだ、止まりそうにないかしら?」
「そうですね、すいません」
しゃくり声も上げず、ただ鼻を鳴らしながら涙を流し続けるサンポは手に持つタオルで目元を拭った。とめどなく溢れるそれに、身体中の水分が出て枯れ果ててしまうのでは、なんてナターシャは思う。
ふと、涙がテーマの童話があった気がする。昔の本で、読んだような。
「泣き真似なんてするからよ。身体の機能を変に使うから、脳が異常反応を引き起こしたんだわ」
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