暗闇の大山椒魚 真っ暗にして欲しい、と言われたから豆電球を消してカーテンを閉め切ると、その瞬間から、慣れ親しんだ六畳間は輪郭すらも分からない真っ暗闇になってしまった。
しゃがんでおそるおそる手で探りながら這っていると、ガラケーが開く軽快なメロディと共に、おじょうさんの顔が浮かび上がった。その光を頼りに這って戻ろうとする様子を、彼女はくすくすと笑っている。
辿り着いた先で耳打ちされた。曖昧な輪郭の俺はずんぐりとしていて、大山椒魚に見えるらしい。
特徴的な斑模様が脳裏に浮かぶと同時に、似たような消えない火傷跡のある背中が少し痒くなった。
俺の母親が、布団のすぐ外にいる気がする。
気がするだけだ。
ここにいるのは、俺の愛する女性だけだから。