バルマト前提のガンマト たとえば。
身体を探られる時のかさついた手のひらの感触。
腰を掴む大きな手。
押し入ってくる時の体温。
自分以外の雄の匂い。
耳元で囁かれる低い声。
全く違うというのに、いや、全く違うからこそ、違うということを意識させられてしまうのだろう。
マトリフには、密かな悩みがあった。ガンガディアと初めて身体を繋げた時に意識して以来、ずっとだ。それは、何十年かを経て大魔道士を追いかけてきた過去の記憶だった。
本人でさえ脳の隅に追いやって、きっぱりと決別していたはずだった記憶である。だが、ガンガディアに抱かれるたびに、それは俄かに立ち昇ってきてマトリフが幸福に浸ることを邪魔していた。
今も、ガンガディアと唇を合わせて体を寄せ合っていると、足元から這い上がってくるものがある。
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