コウフクコンヤ1年と8ヶ月。学年にしたら2年。日向井坂宇宙と兄である日向井坂太陽のこの距離は一生縮まることがない。
宇宙にとってそれはまるで呪いのようなもので、一時だけその差が近付いた気になる誕生日が、堪らなく好きだった。
勿論、数多のプレゼントや人からの祝辞も嬉しくはある。しかし、それらは宇宙にとっては兄以上には特別な意味は持たず、ただ兄から享受する祝福だけが世界を薔薇色に染めていった。それらは有象無象に等しい。
中学2年生の誕生日。宇宙を置いて一人上京し、父の友人であるキョウの家に居候している太陽が、湘南の実家に帰ってくることになった。それを聞いたときの宇宙の喜びようと言ったら、それはもう今すぐ羽が生えて空に飛んでいってしまいそうな舞い上がり様だった。
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