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    DevilsRomantic2

    @DevilsRomantic2

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    宇宙くん誕生日の小話。1000字強のSSです。

    コウフクコンヤ1年と8ヶ月。学年にしたら2年。日向井坂宇宙と兄である日向井坂太陽のこの距離は一生縮まることがない。
    宇宙にとってそれはまるで呪いのようなもので、一時だけその差が近付いた気になる誕生日が、堪らなく好きだった。
    勿論、数多のプレゼントや人からの祝辞も嬉しくはある。しかし、それらは宇宙にとっては兄以上には特別な意味は持たず、ただ兄から享受する祝福だけが世界を薔薇色に染めていった。それらは有象無象に等しい。
    中学2年生の誕生日。宇宙を置いて一人上京し、父の友人であるキョウの家に居候している太陽が、湘南の実家に帰ってくることになった。それを聞いたときの宇宙の喜びようと言ったら、それはもう今すぐ羽が生えて空に飛んでいってしまいそうな舞い上がり様だった。
    ただでさえ兄と生活が離れ離れになった事により、兄離れするどころか寂しさと愛しさを深々と募らせていたので、今回の帰省によって宇宙の感情のダムは決壊し、歓喜の絶頂に心を踊らせていた。無論頭の中には太陽しかいない。
    走って向かった玄関には母の横に見慣れた小柄な影が佇んでいた。久しぶりにその眼窩に映る兄の全てが愛しくてたまらない。一回り大きく…はなってない様で寧ろ小柄に見える体躯、(そこに関しては宇宙の背が伸びたからではないかと推測する。)派手なチョコミントカラーをそこに捉えたやさしげな瞳、「こすも」と自分の名前を呼ぶ耳に馴染む柔らかな声。思わず頬も緩む。
    「にぃに、おかえり!!」
    「ただいま、宇宙。お誕生日おめでとう」
    穏やかな様子の太陽に対して、宇宙の内心は某ランドのエレクトリカルパレード、リオのカーニバル、心臓が高鳴り、正にお祭り騒ぎと言うにふさわしかった。
    込み上げる衝動のままに勢い良く太陽を両腕に閉じ込める。強く抱きつかれても、よろめきもしない強すぎる体幹に惚れ惚れしてしまう。兄の強さは宇宙の中で一番の魅力かつ誇りでもある。
    「明日明後日休みだし一緒にいれるよね?」
    弟らしく甘えを含んだ上目遣いでおずおずと尋ねると、下がり眉のせいで少し困ったように見える笑顔で太陽が答える。
    「うん、泊まっていくよ」
    その返事に、にんまりと緩んだ顔を抑えもしないまま肩口にある頭をグリグリと押し付ける。
    宇宙はたまらなく嬉しかった。今自分の兄がこうやってこの場にいることが。自分を甘やかしてくれる事が。
    そしてきっと、幸福というものは兄の形をしているに違いないと、そう思ってやまない。
    後は太陽が帰らないように画策するだけと、無い頭を捻らせた宇宙だったが、最終的に子供のような駄々を捏ねて母に起こられたのは2日後の話だ。
    そうやって『にぃに湘南閉じ込め大暴れ作戦』はあっさり幕を閉じてしまったので、宇宙の幸福は少しだけ距離が開いた位置にキラキラと輝きを放っているのだった。
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