星までの距離 今日はマジックアワーがきっと見られるね。そう話す友人の目は赤く染まり始めた空に向けられていた。
よく晴れた夏の夕暮れに、真吾、メフィスト二世、百目の三人は、駅のホームで並んで立っていた。朝早くから隣町の市民プールへ遊びに行き、二世のおしゃれ過ぎる水着で思う存分人の目線を独占して来た帰り道だった。
遊び疲れてもう半分目が閉じている百目は、真吾に甘えて寄り掛かっている。それを真吾を挟んだ反対側から叱りつつ、それって何だ?とメフィスト二世は問う。
「水平線の方が赤くて、上空に向かって少しずつ群青へ空の色が変化していくその時間の事だよ。あまりにも美しい光景だからそう呼ばれてるんだ。」
「黄昏の事か。」
「黄昏時とか逢魔時って、警戒すべき時間って意味が裏にあるから、今は、何となくね。」
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