ちくりと指先が熱くなった。見遣れば傷が出来ていて、紙片で切ってしまったのだと理解する。周りを汚してしまう前に、と腕を引くと、何故だかサンクレッドと目が合った。ミンフィリアが片手での処置に手間取っていると、彼はすかさず手を差し伸べる。
「俺がやろう」「ありがとう」「別にいい」
これが当たり前になる程一緒に過ごした、そんな絆が嬉しい。ふたりの心の繋がりは、まるで家族のそれなのだ。
ちくりと指先が熱くなった。見遣れば傷が出来ていて、紙片で切ってしまったのだと理解する。本は汚れていないようで、良かった、とミンフィリアは安堵した。
篤学者の荘園の中をぐるりと見渡せば、サンクレッドとウリエンジェ、それにあの人が今後について話し合っているようで、目が合わないように急いで俯いた。
大切な話の途中で、自分の怪我なんかを知ったらどんな顔をされるか、想像したくない。だって、あの人が家族みたいに大切に想っているのは、私じゃない。
本と白い服を汚してしまわぬよう、とびきりの注意を払って立ち上がる。持っていく本を選定し、三人の元へ戻った。これがいいです、とサンクレッド達に向き合うと、彼は何かを察した表情をしていた。どきりと心臓が跳ねて、傷口が痛む。
「なんだそのばつが悪そうな顔は……」
「本は汚れていませんでした。大した傷じゃない、です」
ズキズキするのは指先だけじゃない。心配をかけないように振る舞う度に、サンクレッドの表情は険しくなる。本を取り上げられて浮いた掌を掴まれると、彼はウリエンジェに対して手当に必要なものを用意するよう指示した。
「ごめんなさい」
「謝らなくていいから、怪我したらちゃんと言え」
こういう時、ミンフィリアはどうして良いのかわからなくなる。本当は見るのも嫌な筈なのに、親切にしてくれるものだから、無理強いして彼を傷つけているようで胸が痛い。
「ごめんなさい」
堪らなくなって溢れた謝罪には、彼は応えなかった。