「たまには」
外に出て空気を吸った方がいい。そう言われて頭を上げたミンフィリアは、とてもじゃないが酷い顔をしていた。砂の家に篭って仕事して、カビが生えたように落ち込んでいる彼女は、恐らく暫く青空を拝んでいない。
サンクレッドは腕を組んでじっと彼女を見つめている。その善意が受け取れない訳ではない。寧ろ嬉しいくらいだ。だが、
「大丈夫よ。サンクレッドは自分の仕事に専念して」
名前をつけてはいけない気持ちは、時と場所を選ばない。
暁の盟主になって初めに捨てたのは、サンクレッドに向けた恋心だった。父親と結婚する、なんて言う幼い子どもが珍しくないように、ミンフィリアも兄として慕っている。その漠然とした親愛は愛情となり、自分を女性に変えていた。
「駄目だ。自分がどんな顔をしているか知らないだろ。それじゃ周りが心配するだけだ」
「サンクレッドは心配してくれないの?」
……なんて言える筈もなく、重い腰を上げて従った。