その教会は廃墟になってから幾年も経っているようで、壁は所々が劣化して罅割れており、床には祝福の花弁と紙吹雪の代わりに瓦礫と埃が撒き散らされているという有様で、さながら冥婚の式場という風情を醸し出していた。
嘗てはカーペットが敷かれ、数多の花嫁が踏みしめたという設定であろうヴァージンロードを、讀賣は図らずも歴代花嫁の足跡を踏みつけるようにして辿り、廃教会内に入場していく。
――ヴァージンロードとは、花嫁が産れ落ちて、父親とともに歩み、終点で新郎にバトンタッチをするまでの半生を映し出したジオラマであるという。
然らばぼろぼろで、伽藍洞で、打ち棄てられたこの冥婚の結婚式会場は、両親に見捨てられて、頽れながらも日陰で生き永らえて来た彼らには何と誂え向きの場であろうか。