毎日SS8/29「いたっ」
リビングは毎日、モリヒトがこまめに掃除している。踏んで痛いものが落ちているはずはない。
「もうカンシ、何も敷かないで爪切らないでよ」
「終わったら掃除機掛けるから堪忍してや」
軽く謝りながらも、カンシの足の爪がパチン、と音を立てた。
後でモリヒトに告げ口してやろう、と心に決め、ソファに腰を下ろす。
「……次爪切り貸して」
「ええけど、文句言っといて」
「なんか引っ掛けたかなぁ」
ポケットからスマートフォンを出そうとしたら、爪が引っ掛かった。
じっと指先を見る。人差し指の爪が少しだけ欠けていた。
「ほい」
「サンキュ」
カンシから爪切りを受け取り、少し伸びたフリーエッジに刃を挟む。ぱち、と掠れた音と共に、欠けた爪がテーブルに落ちた。
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