Shut up Kiss meキッチンから軽やかな鼻歌が聞こえる。
遅めの朝食を済ませ、アオキはソファの上でネッコアラにブラシをかけていた。鼻歌の主であるチリは、ざっくりしたセーターの袖を何度も折ってまくり、泡に覆われたスポンジで食器を擦っている。
「ご機嫌ですね」
「ん? 聞こえとった?」
チリは顔を上げて穏やかに微笑む。
「朝ごはん、美味しかったな思て」
「それは何よりですが、……やっぱり手伝います」
アオキが作った朝食をふたりで食べたあと、「片付けはウチが」と、チリは食器洗いを買って出た。好意に甘えて任せていたものの、少し前から聞こえ始めた愛らしい鼻歌にどうしても意識が向いてしまう。キッチンとリビングのわずかな距離がもどかしく、立ち上がってチリの隣に並んだ。
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