ソロモンはクローゼットから取り出したばかりの、丁寧に整えられた衣装を眺めていた。赤と黒を基調とし、金色の装飾が施されている『魔王の礼装』。皆との日々を過ごしていく中で唯一ソロモンのために作られていない、特別な衣装だった。オーパ山の小屋にしまい込まれていたそれはソロモンへと受け継がれ、彼がソロモン王であることを知らしめる目印になっていた。
「懐かしんでいるのかい?」
「……バルバトス」
こっそり眺めていたことは、どうやらまだばれていないらしい。俺が近づくと、彼は手元の衣装に視線を戻していた。
「またこれを着る機会もあるのかなって……考えてたんだ。これってメギドラルでの正装みたいなものだから」
「正装……。戦装束だから、メギドラルにおいては間違いじゃないか」
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