いつからか、頭の中に夢のような記憶がひっそりと存在していた。異世界のような、まるでゲームのような、そんな浮世離れした国で旅をする記憶。私の傍には誰かがいた。しかし、誰だったかは忘れてしまった。声も顔もすっかり思い出せなかった。
ピピピと鳴る嫌に高い機械音に目が覚める。唸りながらてっぺんのボタンを押すと寝起きの脳に響く音がピタリと止まった。重たいまぶたを開いて、音が鳴っていた方を見ると、時計にはAM6:30と表示されていた。
ご丁寧にその上に表示される日付は1週間の折り返しの水曜日。まだ1週間が半分も残っている事実に少々憂鬱を感じながら、体をゆっくりと起こす。
ぼやけた意識のままなんの意味もなく部屋を見渡してみる。小学生の頃から使っている勉強机に参考書や雑誌、教科書が並べられた本棚が置かれているいつも通りの私の部屋。この世界に生まれ落ちて18年、ずっとこの家で暮らしているはずなのに、何故か懐かしくて、何故か寂しい。
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