パズルピース外の世界は見たこともない新鮮なもので溢れていた。初めて触れた瞬間は心が躍ったけれど。それだけ。
「あんちゃーん!昨日のパズルの続きしよーや!」
「…ええ。もうええわ、それ。飽きた」
「え?」
「後はお前の好きにし」
「あぁ…うん」
楽しいのは最初だけ。これなら研究所で659と手遊びしてる方がずっと楽しかった。
659は何も無い場所でも楽しそうだった。なんでもないことをにこにこ楽しそうに話して、ちょっとした遊びも大層楽しそうに遊んで、きっと659の目にはボクには見えない楽しいものがいっぱいあるんだろう。ボクが兄なのに、いつも659に引っ張られている。
あいつがいないと、ボクはなにも出来んくなる気がする。いや、気がするじゃなく、確実に。だってボク自身には何も無いから。
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