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    ささめゆき

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    ささめゆき

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    デキてるフェルムコ、昨日あげ損ねたエイプリルフール話です。

    日々にひとつまみのスパイス「うーん…何がいいかな」

    こちらの世界でいうカレンダー的なものを見つめて俺は頭をひねる。別に献立に悩んでる訳でもないしランベルトさんの所に卸す品物についてでもない。
    …いわゆるエイプリルフールについてだ。

    「こうして思うと俺の世界ってイベントめちゃくちゃ多かったんだよなぁ。こっちだと祭りはあるけどそれこそ年に一度とかだし」

    とは言っても祭りが多い街も世界のどこかにはあるのかもしれない。それにしても自分の出身である日本は異常すぎるのでは、とさえ思う。なんたって外国のイベントすら取り込むんだから。
    こないだネットスーパーを開いた時に「そういえば」とふと気付いた、もうすぐあちらでは4月なのだと。バレンタイン、ホワイトデーと激動のイベントを乗り越えた身としては4月は特に何もなく穏やかに過ごせると思っていたのだがなんとなーく思いついてしまったのだ。
    ウチの従魔達にどこまでの嘘ならいけるかな?って。

    「スイとドラちゃんには可哀想かな、二人とも純粋だから嘘って知ったら拗ねちゃいそうだし…ゴン爺は…なんかなぁ、たまに見透かしてくるからな」

    意外と悪気のない嘘をつくのって難しいんだよね。それこそ気心が知れた友達とか家族とか…例えばそう、連れ添った相手とか。

    「……フェルにするか」

    フェルなら大丈夫だろう。なんたってあいつはなんだかんだ俺に甘いし──俺の番だし?
    自分で言っててなんかめちゃくちゃ恥ずかしくなってきたな。もし嘘だとバレて怒られても美味い飯と俺のなけなしの愛嬌でなんとかなるだろうし…とたかを括り、俺は座っていたソファから腰を上げた。


    * * *

    屋敷の中を少しだけ歩きフェルを探した。部屋の中に居なかったのでもしかして庭で昼寝してるのかと思ったところにやっと発見。二階のバルコニーで優雅に昼寝を決め込んでいた。
    すると俺の足音にすぐ気付いたのかフェルはピクリと耳を動かして俺の方へ振り向いて。

    『…む、なんだ飯か?』

    すぐコレだよ。もう慣れてるからいいけど。仮にも俺がこうして一人でやってきてるんだからさ、飯以外の用事で来てるとか少しは思ってはくれないもんかね。仮にも番だろーが。
    内心ちょっとだけ呆れた俺はまだだよと言いながらフェルの側に座り込んだ。

    「まぁもうじき昼だけどね、今日の昼飯は昨日のうちに作り置きしたやつだから。昨日の夜に冷しゃぶ食べたろ?その肉の残り使って肉巻きおにぎり作ったんだ」
    『ほぅ。おにぎりというのは米で作ったやつだな?それに肉か、さぞかし美味いのだろうな!』
    「まぁ期待しときなって」

    フェルに限らずこうも料理に期待されるのは悪い気はしない。俺は思わず嬉しくてちょっと笑ってしまったがここに来た目的を忘れてはいけないのだ。
    少し逸る胸を押さえつけながら、俺は静かに言葉を紡ぐ。

    「なぁフェル、ちょっと相談なんだけど」
    『なんだ?』
    「……近いうちさ、ここを出て少し旅に出ないか?俺とフェルの二人きりで」

    俺の言葉に驚いたのか、見開かれた新緑色の双眸。フェルが驚く顔なんて最近あんまり見られなかったから久しぶりでちょっと嬉しくなったのは秘密だ。
    フェルはそのまま目線を少し彷徨わせてからゆっくりと俺の方へ向く。

    『それは…皆と話し合った末の話なのか?』

    えっフェルがそんな事気にするだなんてちょっと意外だな?

    「ううん、これは俺のワガママだよ。皆はまだ知らない」
    『…そうか。もしかしてどこか行きたい所でもあるのか』
    「特には。アテのない旅も良いだろ?」

    嘘、なんて言ってはみるものの。ほんの少しだけは俺の本音も入ってたりして。
    フェルと出会ってからは俺の当初の目的である世界をのんびりと巡る旅はなかなかハードモードになった。スイとドラちゃん、ゴン爺に出会い今やこうしてカレーリナに拠点として屋敷を買い従業員達を雇っている日々を送るだなんて──あの頃の俺に言ったら信じてくれるだろうか?いや無理かもな。
    それに、こうしてフェルと番になり伴侶として生きることを決めたってことも。
    …だからこそちょっとだけ懐かしんでしまうんだ、フェルと二人でああでもないこうでもないと言いながら歩いていたあの頃のことをさ。もしかしたらフェルもそう思ってくれてたりしないかな、なんて思いながら行き着いた嘘がコレだったのだ。

    さて、フェルはどうするんだろう?テンション上がって俺乗せて走り出したりするかもしれない。
    しかしフェルからのリアクションを期待していた俺に返ってきたものは、あまりにも予想外すぎたのだ。

    『…………すまぬ。それは出来ん』
    「へっ?」

    その返答に俺の口からは間抜けな声が出てしまった。

    「そ…それって、俺と旅するのはイヤってこと…?」

    そんなまさか。自由と戦いをこよなく愛するフェルのことだから俺との二人旅なんて喜ぶと思ってたのに!?俺自惚れすぎてたかな!?

    『違う、そんな事は言っておらん!!!』

    ガァッとフェルは吼えるように叫んでから俺を真正面から見据える。

    「違うって何が…」
    『我とてお主と二人きりで旅など願ってもない、いつ何時であろうとお主のことを独り占めにしてやりたいなどと思わない訳が無いわ!』
    「ぇ、」

    サラッとすごいこと言われたような。固まる俺からフェルはまた目を逸らしてバツが悪そうにしている。

    『確かに最初の頃はそんな思いもあった。お主をどこか遠くへと連れ攫い二人きりで暮らすことが出来たら、と…しかし我は思い知ったのだ』

    おずおずとフェルの前脚が俺の方へ伸びてきて膝にぽす、と触れた。そして切れ長の綺麗な目で俺を横目に見ながら言う。

    『この屋敷に皆で住み皆と交流し、楽しそうに笑うお主の笑顔が何よりも愛しい。永遠に見つめていたいくらいにだ。そしてそんなお主を囲み過ごす皆の空気も嫌いではないと』

    ──なんだ。意外だ、なんてさっきも思ったけれど。フェルってばちゃんと皆のこと見てるんだな。
    内心で驚く俺に構うことなくフェルは言葉を選ぶようにして話を続けていく。

    『それにスイはまだ幼い。お主のそばを離れるのは嫌がるであろうし寂しがるだろう。ドラもしっかりしてはおるがどこかでお主に甘えているところもある。それに爺だ。彼奴はお主が許可なく居なくなったと知ればこの世界中くまなく探し回るであろう。…ともかく、皆が揃ってお主がしばし居なくとも大丈夫だと言えるまでは無理だ』

    あぁ、確かにそれは言えてるかも。従業員の皆に従魔の世話を託すのは荷が重すぎるだろうな…。

    『例え我が主の──番でもあるお主の望みだとしても。旅に出て、その最中に遠くに居る彼奴等を思いその笑顔が曇ることが一瞬でもあるのなら……我はそれを叶えてやれぬ』

    すまない。

    再度謝るフェルの声はか細かった。大きなその瞳も伏せられてしまって。

    ………どうしよう。なんてことしちゃったんだろ俺…っていうか…。

    俺、思ってた以上にフェルに愛されてるんだなぁ。

    「フェル」
    『ん…?ぬぅ!?』

    くい、とフェルの首元を引っ張り俺はキスをした。もちろん頬なんかじゃなくて口許へ。
    陽の高いうちに俺からすることなんてほぼ無いからフェルはすごくビックリしたみたいで変な顔をしている、可愛いな。

    「ごめんな…変なこと言い出して」
    『う、うむ。気にしてなどおらん』
    「フェルがいつもそうやって優しいからさ。変に甘えちゃうんだよ俺」
    『番を愛し優しくするのは当たり前だ。どんな甘えであろうと我は許そう』

    俺の少しの本音も否定しなかったフェルが愛しくてたまらなくて、俺はフェルの首にギュッと抱きついた。どうか誰も外から見てないでくれよ…だなんて野暮な考えなんて今だけは捨て置く事にして。
    こんなに俺の事を大事に思ってくれてる、俺の周りも大切に考えてくれてる。
    ……俺の旦那さ、最強に最高じゃない?

    「ありがと、フェル。──愛してるよ」

    遠くで昼を知らせる鐘の音が聴こえる。午後からは本当のことしか言っちゃいけないんだっけ。まぁ本当のことなんだからどうでもいっか。
    フェルの新緑色の瞳が優しく細められて、俺の身体を器用に前脚で引き寄せた。

    『我も愛している。お前風に言うのなら異世界一、だ』

    ニヤリと笑うフェルからのキスは優しく甘い。さっきまでのやり取りがまるでスパイスになったからか、引き立つ甘さに頭がクラクラしそうだ。
    嘘をついて良かった、とまでは思わないけど…うん。フェルの熱い俺への想いが知られたのは棚ぼただと思っておこうかな。
    フェルの耳元へ俺は耳打ちする。

    「な、フェル。皆の分は置いて行くから肉巻きおにぎり持って二人でちょっとそこまでピクニックに行かないか?」
    『む…街の近くにか?』
    「そう。夕方くらいに帰って来ればいいだろ。それまでさ、二人きりでゆっくり過ごそうぜ」
    『フ、それは良いな。束の間でもお主を独占できるのならやぶさかではない。準備が終わり次第行くとするか』

    本当はいつか二人きりで旅をしたい、でもそれはまだこの胸に大切にしまっておくことにしよう。
    叶わないだろうと思っていた嘘が本当になるその日まで。

    ──それまではこの甘やかな日々をのらくらと歩んでいこう。
    時たまこうやってスパイスを振りかけたりしながらさ。






    『ところでえいぷりるふーるとはなんだ?先程お主の頭の中から聴こえてきたが』
    「えー…と、俺の世界でいうと言葉で恋人の愛を再確認する日…かな」
    『成程、先ほどの我等のようなものだな?』
    「ウン……(嘘吐いちゃった…ごめんフェル…)」
    『(おそらく嘘なのだろうが黙っておいてやるか…顔に出てわかりやすい愛い奴め)』

    .



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    Namako_Sitera

    DOODLEヨルン×ウ・ルダイ。ウ・ルダイのトラスト匂わせアリ。身長差に関する捏造もあり(ヨルンがちょい小柄、ウ・ルダイが長身設定)
    付き合ってるのか付き合ってないのか微妙なラインだけど少なくともウ・ルダイはもうめちゃくちゃ好きみたいな感じになってるヘキの詰め合わせみたいな小話。問題は略称に困ること。ヨルウ・ル?ヨルダイ?
    ウ・ルダイさんの特別な虫除け。「(うーん 杞憂だとは思うんだけど……ねぇ? どうしよっか、ウ・ルダイさん?)」

     あくる日のサンシェイド。照り付ける日差しも中々の陽気な街並みを歩きながら、行商人ウ・ルダイはとあるちょっとした懸念にため息をついた。
     今回の用事は討伐依頼、砂漠で徒党を組んだ盗賊団を蹴散らす仕事だ。とはいっても砂漠の盗賊は曲者だらけ、居所を特定しないと話にならない。なのでもちろん情報収集からになるのだが、ウ・ルダイのちょっとした懸念はそこにあった。
     サンシェイドの大通り、一歩前を歩いてそれとなく歩きやすいようにしてくれているヨルンの横顔を見る。印象的な目つきに銀の髪、武骨な雰囲気だけどよく見たら小柄で実はウ・ルダイよりも背が低い。いや身長に関してはウ・ルダイが勝手にでかいだけなので仕方がないのかもしれないが。顔がいいというわけではないが目を惹く容姿をしているのは違いない、このウ・ルダイが目を離せないのだから絶対そうなのだ。しかもそれに対して本人はまったく無頓着なのが猶更悩ましい。
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