甘えさせ上手な人「先輩、焼肉でもいいですか?」
俺のいきなりの提案に、先輩は心当たりがまったくなかったようで、大きな目を更に大きくして驚いていた。
「えーと…なんのこと?」
「こないだのお礼です」
「なんだっけ?」
「だから…その…膝枕の…」
『膝枕』と言葉を口に出したらあの日の出来事が妙に生々しく蘇って、途端に恥ずかしさが込み上げて、俺は思わず視線を先輩から逸らした。
焼肉に誘ったのは連日の任務で倒れかけていた俺に膝枕をしてくれた先輩へのお礼だった。怪我や呪力の使い過ぎで自分史上最高に疲れていた体は、不思議なことにあの日の先輩の膝枕でゲージ満タンと言っていいほど回復した。エナジードリンクを何本も飲んだり、しっかり眠ってもなかなか取れなかった体のダルさがすっきりと取れたのだ。先輩の膝はRPGに出てくるようなヒーリングスポット的ななにかではないかと思ったほどだった。
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