千晶ファンがたまたまオフを見た話暑い。暑すぎる。
まだ5月というのに何故こんなにも日差しが強く、汗が止まらないんだろう。幸いにもたまに吹く風が冷たいぐらいでほぼ真夏。
日本は壊れたのか?
なんて思いながら木の影がある少し駅から離れたところで友人を待っていたら、何となく隣からオーラを感じる人がいた。
パッと見た時、すぐに分かった。隠しきれていない可愛らしさとツンとした表情。綺麗な紫の瞳とそして何もよりも、似合いすぎてるハーフアップのお団子に眼鏡姿と目の下にあるほくろ。
元モデル、現カメラマン兼登山家の月谷千晶だ。
多分一般人からしたらただの顔のいい男性だと思うかもだが、この私モブ子は読モ時代から追いかけ続けている千晶くんのファンなのだ。
もしかして人混みが多いせいか誰も気づいていないだろう。かの有名な月谷千晶がいることなんて、きっと相当なファンじゃない限り気づかない。
1人で悲鳴をあげながら友人にLINEしていると、彼の携帯から電話が鳴った。
「あ、もしもし〜?今どの辺?」
しゃ、しゃべったー!?!?!?!ふぁわわわわわわわわわわ!
あの、彼が。生で、聞けるなんて。思いもしなかった。しかし、ふと思い出す。
そういえば彼は質問コーナーのときにオフは外に出ないと言っていたような……もしかして、彼女か?推しとは言えどもガチ恋では無いのでその辺はいいが。純粋に気になる。
過激なファンと思われないよう特になんもないように何となくスマホを見る。友達は遅れてくるそうだ。いつもならスタバを奢らせるが今回は許す。なんてあわあわしてたら
「え、かわいい子みっけ♡」
「あれ、1人かなぁ?良かったら俺たちと遊ぼーよ」
なんかクソイケメンが来た。え、知り合い?なんて思ってたらいや違う。これなんぱだ。
そりゃそうだ。暑くても、最高な顔をしている彼ならなんぱは食らう。しかも可愛いから女の子と間違えられてるなこれ。
いや、まて、しかし、待ち合わせしてるよな。と思い彼を何となく見ると
「…………………………………」
無言。ただ無言。それでも頑張ろうとお兄さんは話し続ける。むしろ可愛そう。
あまりにも無視する千晶くん。さすがです。
なんて思っていたら遠くから彼の名前を呼ぶ声が聞こえた。
「「千晶/千晶さん〜!!」」
先ほどで無言だった彼は、顔を上げてまるで顔周りに花が咲いたように声の主の方へと走る。
「…!…2人とも遅い〜!暑いのに〜!」
「ごめんなさい!とうかさんが迷子になってたので…」
「いや、違いますけど?」
「あははwじゃあスタバ奢ってもらわなきゃだねぇ」
「おいまってくれ、千晶。」
まて、先程まで無言で高嶺の花みたいなそんな存在だった彼が、ポメラニアンみたいにしっぽをぶんぶんとふっていくように走っていく。
そのまま放置されるナンパ師。
声の方を見ると学生くらいの女の子と同い年くらいの男性。
どんな関係だろうがきっと、彼が大切にしている人なんだろう。なんて思いながら今の友人を大切にしようと決意し、待つことにした。
「というか千晶。なんか声掛けられてなかった…?」
「…あぁ。多分幽霊」
「「…幽霊?????」」