【ブラ晶♀】おとぎ話 おとぎ話、の語源を知ったのは高校生のとき。国語の先生が、思い出したように口にした雑談で。
あっ、と私は声を弾ませた。リケとふたりでうーんと首を傾げていたところに、かつかつと靴音が聞こえたから。
「ブラッドリー! ちょうどいいところに」
「あ?」
怪訝な顔をするブラッドリーをソファへ招いて、つい今までリケと覗き込んでいた本を見せる。
「リケに、おとぎ話を読み聞かせてもらっていたんですけど」
私の言葉を、少し悔しそうな面持ちのリケが引き取る。
「はい、途中までは上手く読めていたんです。でも、この部分がまだ読めなくて……」
言いながら、リケはしゅんと面差しを俯ける。そんなリケを一瞥すると、ブラッドリーは手元の本に視線を向けた。そうして、とん、と。骨ばった指先で、文章中の一節を示す。
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