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    hinaterukure

    @hinaterukure

    運命の巻戻士とかカシバトルとかコロコロ作品、創作とかが主に主食の腐女子。デブとおっさんと筋肉が大好きなおっぱい♂星人。えっちなのを投稿したくてポイピクデビューしました。

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    hinaterukure

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    創作/誰ロク話第二弾。リーダー、ギタボやめるってよの続きです。紅音ちゃんがかなりしたたかな子になってしまいました。捏造してるとこが一部あります。よその子お借りしました!時系列的に奏太くん出てないけど次は必ず出すからね……!!

    適材適所②「Amazing grace……How sweet the sound……That saved a wretch like me……」

    まだ誰も来ていない練習場。誰より早く練習場に着いた月下は椅子に座り、ギターを弾きながら何やら口ずさんでいる。

    もうギターボーカルは辞めると決めた。その方が、バンドの今後のためだ。でも、まだ縋りついている自分がいるのは確かだ。なんて我ながら未練ったらしく、みっともないんだろう。売れるために、私情は捨てないといけないのに。

    か細くどこか物悲しげに聞こえるその歌声を聞くものは、誰もいない。

    かと思われた。

    「月下さん、その歌……」
    「ッ!?」

    いつのまにか、紅音がそばに立っていた。演奏と歌に集中していたせいだろうか?月下は慌ててギターを床に置きガタンッと立ち上がる。

    「あっ……紅音!?いつのまに来てたのかよ!?来てたんなら声かけろよ!!」
    「うふふっ、月下さんを驚かそうと思って……忍び足で近づいてみたんです」
    「そういう悪戯は心臓に悪いからやめろ!」
    「ふふふっ、すいません……ところで、月下さんってもしかしてコーラスの経験おありで?」
    「ッ……!」

    紅音の言葉に、月下はギクリとする。

    「い、いや……何を根拠に」
    「さっき讃美歌を綺麗な高音で歌ってられてましたよね?あの発声の仕方は素人じゃ出ませんし、もしかしたら経験者かと」
    「ッ……そ、そうだとしてもお前に関係ねぇよ!お前がボーカル務めるんだから、オレのことなんてどうでもいいだろ!」

    月下がそう捲し立てると、紅音はムッとしたような顔になる。

    「関係なくないですよ。私はもう、“仲間”なんですから。月下さんも言ってたじゃないですか」
    「そっ、それは……そうだけどよ……」
    「それより月下さん、さっきの歌もう一回歌ってみてくれませんか?」
    「は……???」

    いつのまにか紅音は、月下のギターを手に取っている。

    「さっきの讃美歌は私も知っているので、即興で弾くことできますよ?私が弾くので、月下さんは歌ってみてください」
    「まっ、待て!なんでそんなことする必要があるんだ!?」
    「なんでって……富良野さんから頼まれたんですよ?月下さんの歌の指導してくれって」
    「あの野郎!余計なことを!」

    月下は頭を抱え、それから紅音に向き直る。紅音に言い聞かせるように、月下はこう言った。

    「いいか、紅音?オレはなぁ、11年もギターボーカルやってきた。11年もやってきたからこそ分かるんだよ、オレにはもう伸びしろってもんがない」

    苦しげにも自嘲しているようにも見える顔で、月下は言葉を続ける。

    「音楽の才能があるお前ならわかるだろ?これ以上、才能も何もないオレに指導をしたところで時間の無駄」
    「月下さん」
    「あ?」

    そこで月下は紅音の顔を見て、ゾワッとなる。それぐらい、紅音は怖い顔をしていた。初日の、緊張してガタガタ震えている少女なんてどこにもいない。美しいからこそ、尚更迫力が増しているのだろう。

    「才能才能って……もううんざりなんですよ。そんな目にも見えない本当にあるのかすらわからない概念のために、大事なものを捨てないでください。今までの努力を、否定しないでください。諦めるための言い訳に使わないでくださいよ」
    「い、言い訳だぁ……!?お、オレはっ……バンドの今後のためにだなぁ……!!」
    「いいですか?」

    ズイッと紅音の顔が近づいて、月下は思わずヒッと小さく悲鳴を上げる。紅音は瞬きひとつもせずに月下の目をまっすぐ見つめ、こう言った。

    「月下さんが私の指導を受けないというのなら、私はこのバンドから脱退します」
    「はっ……はぁぁっ!?」

    思ってもない言葉に素っ頓狂な声を上げる月下。紅音はニヤリと笑う。

    「この業界長いんですよね?なら、バンド仲間が次の日飛ぶなんてよくある話でしょう?あと、言ってませんでしたが私いろんな事務所やバンドにたくさん声かけられてるんですよ?気が変わって、もう少し待遇の良さそうなところに行くかもしれませんねぇ」
    「きっ……汚ねぇぞテメェ!!」

    まさしく、自分で自分を人質にするかのような卑怯なやり方。月下は吠えてギロリと睨むが、紅音はまるで子犬に吠えられているかのような涼しい顔だ。

    「それが嫌なら、受けてくれますよね?私の指導を」
    「グッ……!」

    月下は苦虫を噛み潰したような表情をして思考を巡りに巡らせ……それから、渋々といった感じで頷く。

    「わかった……けど、富良野が来るまでだからな?富良野が来たら指導は即終了、わかったな?」
    「ええ、構いません」

    さっきまでの怖い顔が嘘のように、まるで花が咲いたかのように微笑む紅音。女って怖ぇ……て内心思いつつも、月下は流れるギターの音色に合わせて……おずおずと、ソプラノを歌う。

    ✳︎

    あれから、どれぐらい経ったのだろう?

    最初は人前でソプラノを歌うのに抵抗があったが、それも徐々に薄れていった。それに、紅音が懇切丁寧に指導をしてくれたのもあるだろう。最初と比べて声の通りが少し……いや、かなり良くなっていった。低音のがなり声で歌うのが主な自分だけに、誰かにこのような指導を受けるのは子供の頃以来で新鮮に感じた。

    「はぁっ、はぁっ………これで、満足か?」
    「はい!かなり良くなりましたね!1日でこれだけ改善できるなんてすごいですよ!」

    興奮したような面持ちで拍手する紅音に、あまり普段褒められることのない月下は少し顔を赤らめた。

    「そ、そうかよ……じゃ、じゃあもういいだろ?もうそろそろ富良野が来る頃だし、終わりにして……」
    「あっ、そのことなんですけど……富良野さん、今日は遅れてくるそうですよ?」
    「ハァッ!?」

    そう言って、紅音はLINEの画面を見せてくる。『ごめんなんだな、電車が遅延するみたいで……遅れるから先に練習してて欲しいんだな』という文と一緒に土下座してるかわいい動物のスタンプが送られていて、月下は頭が痛くなる思いをした。

    「あっ、あの野郎……!いや、電車の遅延は仕方ないけどよ……なんだってこんな時に……!?」
    「なら、続けますよね?レッスンを」
    「ウッ……!」

    紅音はニコニコとした顔で、バッグの中から何やら楽譜を出してそれを月下に押し付ける。

    「次はこれ、歌って欲しいんです。私のお気に入りの曲のひとつなんですけど」
    「これ?………って、これって、あれじゃねぇか!?一度MV見たことあるけどよ、救いようのねぇ悲恋のやつ!!これをオレに歌えと!?」
    「ええ、月下さんの歌声をじっくり聴いてみて、それで月下さんの声質的にこの曲が合うかと思いまして」

    「私、お気に入りの曲の楽譜はいつも持ち歩いているんですよ」と笑って言う紅音に、月下はまたもや頭が痛くなる思いをする。

    「あ、あのよぉ……オレのキャラ的に似合わねぇよ、こんな曲。絶対笑うだろ、こんなん歌ったら」
    「おや?私の前で散々讃美歌を歌ったあとでそれを言うんですか?」
    「そっ、それはお前が強制したからだろ!?」
    「笑いませんから、どうか歌ってもらえませんか?きっと、月下さんなら歌いこなせますよ」

    ギターを手にしてやる気満々な様子の紅音。これはもう、何を言っても聞かないだろう。あーもうっ!と頭をワシャワシャと掻き乱し、月下は折れた。

    「あークソッ!……言っとくけどよ、富良野には内緒にしとけよ!あいつ絶対笑うからよ!オレとお前だけの秘密な!」
    「はい、もちろんです」

    「まあ、聴いているですけどね」と内心思う紅音。さっきの遅延の連絡は嘘で、富良野はもうすでにスタジオに到着している。指導をしながらこっそりLINEで連絡しあってて、廊下で待機するようにお願いしたのは月下に内緒だ。

    そして、ドアの覗き窓からこっそり中を覗いている富良野は、どこか微笑んでいる様子だ。

    そうとは知らず、月下はギターの音色に合わせて歌い出す。

    「ある日アンタは言った「私に夢の続き見せて」と……♪」


    END
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