こうふく このひとが幸せであればいいと思った。自分といることで幸せを感じてくれるというなら、その気持ちに応えたいと思った。
最初は、すべてあなたのためだった。あなたの希いを叶えられるのなら、それでよかった。
それなのに、いつからだろう。あなたといることが、自分の幸福になっていた。
心底たのしそうに笑う顔。うれしそうに此方を見つめる瞳。気の抜けた横顔。すこし甘えた物言い。
ぼくへと向けられる、ひたむきな信頼と愛情が、どうしようもなくうれしい。あいしている、と声に出さずとも伝わってくる、態度が、仕草が、どうしようもなくいとおしい。
いつでも手を離してあげられるよう覚悟をしていたはずのぼくは、気付けばあなたとの生活がいつまでも続けばいいと希うようになっていた。
968