赤い靴ー少女は自由になる為に赤い靴を手放したー
「叶がいなくなった」
担当行員である昼間は苦虫を噛み潰したような顔で黎明の友人らに告げる。
それは、突き刺すような木枯らしが吹く冷たい冬のある日の事だった。
「いなくなったとは?連絡が取れないのか?」
「連絡どころか叶が住んでたマンションももぬけの殻だ。口座も持って解約されたから銀行側からは探しようがねぇ」
「口座も?へぇー…」
昼間の言葉にソファに寝転がりゲームをしていた真経津はつまらなさそうに唇を尖らせる。
口座の解約…それは、ギャンブラーとしての叶黎明と対自する事はもう二度と叶わない事を意味しており他人とのギャンブルという名の遊びを何よりも楽しみとする真経津にとってそれは非常に退屈で残念な事実だが、目を逸らしようが無い現実に真経津は早々に思考を切り替えゲーム機を置きソファから起き上がるとテーブルにジュースが注がれたグラスを置いていた獅子神の方を見る。
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