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    JesJuda

    @JesJuda

    アリーナのジーユダ作品

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    JesJuda

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    4月1日のジーユダ
    生存ifからしばらく後の話

    #ジーユダ
    #アリーナJCS

    Fool that I am4月に入ったばかりのとある朝。
    ジーザスと一緒に朝食を取っている時、彼が壁のカレンダーを眺めているのが視界の端で見えていた。
    すると、ふと彼がにこにこと見つめてくるのに気が付き、ユダはコーヒー片手に顔を上げた。
    目が合うとジーザスはより笑みを深め、口を開く。

    「えーっとね。ユダ、嫌い!」

    その言葉の意味をゆっくりと理解すると、ユダは瞬きをした。
    周りの時がしばし、止まった。
    窓の外から聞こえる鳥の囀りが、冷蔵庫の静かな振動音がひどく煩い。
    頭から爪先までの感覚が鈍くなっていき、体が冷たく感じる。
    マグカップを落としてしまいそうな気がしたので、ゆっくりとテーブルに置く。
    そんなユダを、ジーザスはいつもと変わらない優しい笑みで見つめ続けていた。

    「…そうか」

    ユダは静かに頷いてから、やっとそう呟いた。
    目を伏せ、テーブルに手を置き、立ち上がる。
    そしてジーザスの方を見ないよう、目の前だけを頑なに見つめながら、キッチンから出て行った。


    自室で、ユダはしばらく使っていなかったリュックを取り出し、荷物を纏め始めた。
    クローゼットから、チェストから衣類を取り出しては押し込み、目についた雑誌やCDも片っ端から放り込む。
    引き出しの中のアクセサリーを取り出そうとした時、ユダの手は一瞬怯んだ。
    記念日や誕生日に貰った指輪や腕輪も、クローゼットにかかっている少し良いジャケットも、限定品のCDのボックスセットも全て置いて行くことにした。

    思ったよりは、長続きしたな。

    そんなことを思いながら、リュックの中に手を突っ込み、ぐいぐいと押し込んだ。
    こんな日が来ることはくらいは、知っていても良かったはずだった。
    ジーザスがユダを本当に愛することなどがあり得ないことくらい、分かっているべきだったのだ。
    最初のうちは、ちゃんと弁えているつもりだった。
    だが日にちが経つにつれ、ジーザスが何度もユダを好きだと囁くのに慣れてしまい、こんな日々がずっと続くといつしか信じ込んでしまっていたのだ。

    そんな自分を、なんて愚か者なのだろうと思った。


    一体、何で嫌われたんだろうな。

    考えてみても、よく分からなかった。
    心当たりが全く無い気がすると同時に、自分の普段の言動を思い返すと、心当たりしか無いような気もしてきてしまう。
    あんなに残酷な笑顔で言うくらいなのだから、よっぽど幻滅されたのだろう。
    ユダの普段の態度が、よほど悪かったのだろうか。
    それとも別に、切っ掛けなどないのかもしれない。
    ユダが如何にどうしようもない人間であるか突然気が付き、急に嫌になってしまっただけなのかもしれない。
    それも仕方のないことだろう。
    一体誰がそんなジーザスを責めることが出来るだろうか?
    自分を売り、危うく死にかけるような酷い目に合わせた男を、愛せると言う方がおかしい話だったのだ。


    「…ユダ!何やってるの!?」

    ふいに部屋の扉が開く音がしたかと思うと、背後からジーザスの声が聞こえた。
    ユダは溜息を押し殺した。

    ああ、くそ。
    洗面所の物も回収したかったんだけどな。

    何故、ユダが大人しくアパートから出て行くまで放っておいてくれないのだろう。
    ひょっとして、何か恨み節を言いたいのだろうか。
    だがジーザスには悪いが、ユダはさっさと出て行きたかった。
    パーカーを手に持ち、リュックを背負い、床を見つめたままユダはジーザスの横を通り過ぎようとした。
    真っ直ぐに玄関に向かい、出て行くつもりだったのだ。
    だがジーザスは、ユダの両肩を掴んでしまう。

    「どこ行くの?」

    ジーザスは、少し低い声でそう言った。
    ユダの顔を覗き込むようにしてくるので、目線を避ける。
    どこでも良いだろ、勘弁してくれ、と内心思う。
    ジーザスが肩を離してくれないので必死に顔を遠ざけていると、もう一度名前を呼ばれる。

    「ユダ。今日は4月1日だよ」

    それが何だよと言おうとして、ユダはふと固まった。
    ゆっくりと、ジーザスの顔を見る。
    ジーザスは真剣な、それでいて少し焦ったような顔をしていた。
    ユダはゆっくりと理解する。
    馬鹿みたいな気持ちになってくる。

    「エイプリルフールで言ったんだよ、ユダ」

    本当に、馬鹿だ。
    ずる、とリュックが肩から落ちかける。
    全身の力が抜けてしまいそうになるのを、何とか堪える。
    そしてユダは必死に平然とした表情を作り、頷いてみせた。

    「ああ。分かってたよ」 

    冗談だって、と言いながら、なんとか少し口角を上げる。
    上手く笑えているか、全く自信が無かった。
    案の定、ジーザスは少し眉を寄せて、訝しげな顔をする。
    ユダの両肩を握る手には、更に力が込められていた。

    「…本当に?」
    「ああ、もちろん….」

    当たり前だろ、と言おうとして、ユダは黙った。
    胸から、急激に何かが込み上げてきてしまっていた。
    ユダがジーザスから一歩遠ざかると、彼はやっと肩を掴む手を離してくれる。
    そしてユダはリュックを地面に置きながらベッドに腰掛け、ジーザスに表情を見られる前に、何とか片手で顔を覆ったのだった。

    突然襲いかかった感情に、ユダはなす術がなかった。
    必死に、せめて声だけは出ないよう堪え、同じ体勢のまま固まることしか出来ない。
    頬が、手の平がすっかり濡れてしまうと、ベッドが少し沈み、ジーザスが隣に座ったのが分かった。
    ユダの肩を、ジーザスの腕がそっと抱いた。

    「ユダ。ごめん」

    ジーザスは、黙りこくるユダの耳元で囁いた。
    ユダは喋ることが出来ない。
    今話せば、声が震えてしまうのは確かだった。

    「嘘でも、言わなきゃ良かった」

    ジーザスが、唾を飲み込む音がした。
    彼の声も、少し震えているだろうか。

    「愛してる、ユダ。もう分かってくれてると思ってた」

    そんなことを言われて、ユダは限界を迎えた。
    ついに堪えきれず、嗚咽を押し殺しながらも、肩が激しく震え出してしまう。
    ジーザスはそんなユダの頭を抱え、首元で抱きしめる。
    彼の涙を、泣き顔を、見ないようにしてくれる。
    ユダは諦めて、思い切り涙を流した。
    彼の震えが落ち着くまで、ジーザスは黙ってそのままで居てくれた。

    「一人にしようか?」

    ユダの呼吸が少し整うと、ジーザスはそう囁いた。
    ジーザスは、ユダのことをよく理解していた。
    確かにユダは一人になるために、この後散歩に出かけるだろう。
    気を鎮め、起こったことを振り返り、整理する時間が必要だった。
    散歩から帰ってくる頃には、また何事もなかったかのように、穏やかな日々を積み重ねて行くために。
    だが、今は。
    ユダは鼻を啜り、やっと口を開いた。

    「…キスしてくれるか」

    ジーザスは、ユダを抱きしめる腕を緩めた。
    ユダの、目も鼻も真っ赤な顔を覗き込み、触れるだけの柔らかいキスをする。
    そしてそっと唇が離れるとユダは目を閉じ、涙が完全に止まるのを待ちながら、ジーザスの腕に抱きしめられた。
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