【別れても好きな人】「あの子は、とっても素敵な子なんだよ。」
帰りにスーパーで買ってきたお酒を一缶、開けて少しずつ飲んでいるその人は普段よりもずっと幸せそうな顔をしている。
お酒が入って、ほわほわとした雰囲気になったスーハーさんはふとスマホを取り出して少しいじって、数分たった時ボクの顔の前にその画面をずい、と出してきた。
そこに写っているのはごく一般的なファッションモデルさんで、すらりとしたその体を見てああ綺麗だなという小学生よりひどい感想が浮かぶ。
「ほら、これ。最近じゃこうやってモデル業やってるんだって。この間広告でたまたま見かけてさぁ、もしかしてって思って調べたらビンゴだったね!」
心底幸せそうに語るから、僕は何も言えなくなった。えへへと笑いながら愛おしそうに画面を見つめる彼、今すごくきれいだ。
若干困っているように眉を下げつつもやっぱりホンモノの笑顔で居るから、変なことは言えない、と感じる。まるで、自分の大事な宝物を抱えて母親に見せる子供みたいな、そmんなふうにスーハーさんは画面にうつるその人を僕に紹介してくれる。
「綺麗だもんなぁ。よく合うよ、うん。」
君はずっとこんな仕事に就きたいなあなんて話してたよね。まるでそばにいるかのようにそう言うスーハーさん。
大好き、なんだろうな。
時たま僕らはこうやってお酒を飲み交わす時があるけれど、その度スーハーさんは元恋人のことを現恋人かと言いたくなるほど楽しげに、幸せそうに語るのだ。今はもう別れているでしょうなんて、野暮なことは絶対に言えない。言ってしまえばたぶん、不安定気味な彼ががらがらと音を立てて崩れてしまうだろうから。
別れてもずっと好きな人、好きと別れてから改めて感じた人。あるときスーハーさんは、元恋人のその人のことをそうやって形容していた。