オクタヴィネル前寮長一 オクタヴィネル寮長 リヴィ・カポドリオ
あと必要なのは、彼の信頼だけだった。
談話室の窓から見える海は、水槽のように作り物めいていた。
陸の人間がわざわざ金銭を払って水族館に行きたがる、という話は陸の訓練学校で聞いた有益な情報の一つだ。水中環境を整えるのには莫大な費用と維持費が掛かる。それがタダで目の前にあるというのに、活かさない手はなかった。
「窓から見える海のメンテは寮の維持費から出てる。考えたな」
オクタヴィネル寮長、三年生のリヴィ・カポドリオは笑みを浮かべ、ゆったりと脚を組み替えた。
「ありがとうございます」
否定も謙遜もせず、笑みを返す。一年生だろうが入学してまだ二ヶ月だろうが、彼はやる気のある者を好む。周囲で固唾を飲んで動向をうかがっていた寮生たちが、寮長の言葉を盛り上げるように囃し立て口笛を吹いた。
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