tango 家臣が肖像画を差し出す。絵の中の娘は微笑み、ふくよかな体をゆったりとした服に包んでいる。
「これは?」
「ご紹介をいただきました。多くの子をなす家系の娘です」
別の肖像画ではほっそりとたおやかな娘が艶やかに微笑んでいる。
「この娘は、近隣でも美しいと評判だそうです」
「シェンウー様、クルマ様はまだ幼いのです。もしまた流行り病が起きれば……」
シェンウーの父はすでに亡く、先だっての流行り病で亡くなった後妻との間にもクルマしか子がいなかった。継母の葬儀を終えたばかりとはいえ早く妻を娶り、子をなしてほしいという家臣の気持ちはわかる。分家もあるとはいえ、直系の方がより継承の儀の成功率が高い。しかし、まだ亡きひとの面影がシェンウーの胸の奥には宿っている。
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