【二次創作】プレゼントは私(春クリ)「プレゼントは私です」
春にそう言われクリスは耳を疑った。
「え、え、なんですか?」
「プレゼントは私ですよ」
リボンを付けた春が、もう一度同じセリフをなぞった。
そういったフレーズは恋愛小説やドラマで聞いたことがあったが、現実に聞くとは思わなかった。
自分は夢でも見ているのだろうか。クリスは手の甲をつねってみたけれど、どうやら夢ではないらしい。
「だめでしたか?」
「だめじゃないです嬉しいです! ただ、急だったのでびっくりして……」
首を傾げて眉を下げる春の様子に、クリスの頭の中は「かわいい!!」でいっぱいになった。
それにしても、どうしたことだろう。春が急にこんなことを言い出すだなんて。
誕生日もクリスマスもまだ遠い。他にプレゼントで思い当たることはーー。
「ーーお付き合いしてからもうじき3ヶ月ですね」
「覚えていてくれてよかった」
春がふにゃりと笑う。
『彼女と距離を近づけるために、なにか良い方法とかありますか?』
師にそう尋ねたところ、冒頭の方法を勧められたらしい。
恋愛経験豊富な彼の提案だと考えると納得がいく。
ただ、言った当人は軽口のつもりで、まさか春が実行するとは思わなかっただろう。
そこを真に受けて実行するところが春の魅力であり、心配なところでもある。
「……私以外には言わないでくださいね?」
苦笑しつつ春の手を取る。
「い、言いませんよこんな、恥ずかしいこと…」
恥ずかしいとは思っていたらしい。それでも自分と距離を縮めようとしてくれたのだと思うと、クリスは胸が一杯になった。
「〜〜…抱きしめてもいいですか?」
「、どうぞ」
クリスが言うと、春はくすりと笑って腕を広げた。腕の中に収まり、抱きしめる。
春の体温が伝わってきて、それだけで幸せだと感じた。
心臓の音が早いのが伝わってくる。自分と同じだとクリスは思った。
「距離、近づきましたか?」
「そうですね、とても温かいです」
クリスが腕の中から春を見上げると、彼はふわりと微笑む。
「もっと、近づいていいですか?」
そう言って、するりと春の頬を撫でる。ぴくりと肩が揺れた。
「……どうぞ」
そう小さくつぶやき、春は長い睫毛を伏せる。クリスの手に触れた頬が熱い。
クリスはどきどきする心臓をおさえ、ゆっくりと顔を近づける。
「春さん」
「はい」
春も緊張しているのか、声が少し強ばっている。
クリスは安心させるように微笑み、春の頬にそっと唇を触れた。
「ふ、ふふっ」
「クリスちゃん?」
「すみません、なんだか心がくすぐったくって。あと、春さんかわいいなって」
くすくすと笑い、クリスが春の頭を撫でる。
「そう、でしょうか」
「はい、大好きです」
頭を優しく撫でていると、春は気持ちよさそうに目を細める。
猫みたいでかわいいなと思ったけれど、言ったら拗ねるかもしれないと思い直し、クリスは言葉を飲み込んだ。
「今日はこのくらいで。……心の準備ができたら、もっとください」
クリスが内緒話をするように耳打ちすると、「ーーっ、は、はい」春が小さな声で返事をした。
こうして二人の距離は少し縮まり、ささやかな幸せを分かち合ったのだった。