【二次創作】春さんのお家に行く話(春クリ)「どうぞ、入ってください」
「お、おじゃまします」
春の家は初めて訪れる。緊張した様子で、クリスは玄関に足を踏み入れた。
家に入ると、いい香りが漂ってきた。なんだかとても落ち着く、優しい香りだ。
リビングへ通され、テーブルの前に座る。すると、女性がお茶を運んできてくれた。
「こんにちは、よくいらっしゃいました」
「うちの母です。お母さん、彼女がクリスさんです」
「はじめましてっ。あ、あの、お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」
「まあ、名前で呼んでくれるの? 雪子といいます」
「雪子さん、素敵なお名前ですね」
「まあ、まあ、かわいらしい」雪子は満面の笑みを浮かべた。「よかったら後でお話ししましょうね」
「はい、ぜひ!」
雪子の言葉に、クリスは明るく頷く。
手土産のゼリーを渡すと、雪子はとても喜んでくれた。
雪子と春は、スイカの準備をするため台所へ向かった。
座って待っているよう言われていたので、クリスは椅子に座る。
一人になって、緊張がまたぶり返してきた。和風のリビングを見渡すと、雪子のものと思われる和風小物や花瓶が置かれていることに気づいた。
かわいらしい小物を眺めて、次第に落ち着きを取り戻していく。
ふと、金属の涼やかな音が軽やかに響く。クリスが振り返ると、金属製の風鈴が風に揺られていた。春が以前に言っていたのはこれのことだろう。風に揺れる様子がかわいらしくて、クリスは近寄ってまじまじと風鈴を眺める。
「お待たせしました」
戻ってきた春が声をかける。手には、真っ赤なスイカが載ったお盆がある。
「すみません、わざわざありがとうございます」
「いえいえ、こちらこそ、来てくれて嬉しいです。親戚から送られてくるのですが、食べきるのが大変で」
春がテーブルにスイカを置いていく。
柔らかい果肉に、果汁がたっぷり詰まっているのが見て取れた。そして鮮やかな赤色。
「わぁ、おいしそうですね」
「ええ本当に。先程のゼリーも冷やしているので、後で食べましょう」
スイカに塩をかけて食べ始め、スイカの甘さとみずみずしさに舌鼓を打った。春も幸せそうに食べ進めている。
「すごく美味しいです!」
「そう言ってもらえて嬉しいです」
「あと、あの風鈴、とてもかわいいですね」
クリスが窓際の風鈴に目を移す。灯籠の形状をしているそれは、チリチリと涼やかな音を立てた。
「小さい頃からうちにあって、私も気に入っているんです」
「そうなんですか。風情があって素敵です、うちの風鈴はガラス製なのですが、この音も心地よくて好きです」
二人はその後も談笑しながら、スイカを食べ進めた。クリスは、春と過ごす時間が楽しく、自然と笑顔がこぼれる。そんな彼女を見て、春も嬉しそうに微笑んだ。
「クリスさん、よかったらまた来てくださいね」
「はい、ぜひ!」
その後はゼリーを食べながら雪子とも会話をし、楽しい時間を過ごした。
家に入るときの緊張は、すっかりなくなっていた。