Plethora 世界にはたったひとつ、目に見える愛がある。
***
「牙崎くんの髪って、地毛?」
「……あ?」
事務所には髪の色素が薄い人が何人かいるけれど、もしも僕とおなじ人がいるとしたらそれは牙崎くんだけだと思ったからこんな質問をした。よく考えたら失礼な質問だったけど、怒られてもいいって思ってた。
僕の言葉を聞いた牙崎くんは、猫のように周囲を見渡してつまらなそうに口をへの字に結ぶ。ここにはアマミネくんもマユミくんもぴぃちゃんもいないし、僕は牙崎くんにいくつかの和菓子を差し出して、こうして事務所のソファで向かい合っている。それに名前まで呼んでいるんだから、この言葉の向かう先は牙崎くん以外にはないってことは理解してもらえているはずだ。
10618