打上花火の帰路途切れることのないように、上がり続けていた花火の音が止んだ。
しばらくの静寂の後、夏虫の鳴く声が耳に戻ってくる。
「……花火、終わりましたね。」
はい、と小さく答えるひとは、その体もやはり小さい。
消えてしまいそうだと思ってその片手を取り、帰りましょうと呼びかけると、やはり小さく、はい、と。
今度はさっきよりも消え入りそうに小さい声で、自分のしたことは逆効果だったのかもしれないと思いつつも、それでもやはり小さなこの手を離す気にはなれなかった。
りりりりと響く鈴虫の声の中を、二人でゆっくり歩く。
夜ももう遅い。本来ならば急いで帰るべきだが、今は油断はせずとも急ぐ必要はない。俺がいるから、何かあってもこのひとを守るから。
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