(題名は未定) 昼も終わりそろそろ日が沈む頃、鍾離は望舒旅館から璃月へ帰っている途中の道端で「先生!」と軽快な声で呼ばれた。
「どうした?」 と軽い返事をしながら、すっかり聴き慣れた声のする方へ振り返る。
彼の目に映ったのは、とびきりの笑顔で鍾離に飛びついてこようとしているタルタリヤだ。 一見すればとても微笑ましい光景だが、残念ながらタルタリヤの両手は鍾離へ抱きつくために伸ばしているわけでなく、水元素で生成された鋭い双剣が握られていた。
半歩だけ下がり、襟元にギリギリ届かない。落ち着いた様子でタルタリヤへ視線をやると、「ちぇ〜」と頬をふくらせながら不貞腐れている。追撃はしてこない。
「そう簡単に人に刃を向けない方がいいぞ、公子殿」
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