ともかず♀
「……その、きょうは…」
万葉はモジモジとちまこい指先を臍の前で擽りながら、自分よりも高い位置にある彼女の顔を見上げる。万葉より頭一つ分背が高いので、キスをするにも一苦労なのだ。
背伸びをしても彼女が意地悪をして踵をあげれば、万葉はキスできないまま雪のように白い頬を膨らませるしかない。しかし、キスが届かない身長差も万葉は気に入っていたのである。
「したいならやるが、…最近、ハマりすぎてるんじゃないか」
「ぅ……」
万葉は女同士の恋愛を自分はしないと思っていたタイプだった。楓原家の長女として生まれてしまった万葉の成すべきことは子を作り、子孫繁栄を目指すこと。だからその分、満足のいく恋愛なんて出来ると考えもしなかった。
2158