ファイトの打ち上げとはいえ、酒の席はあまり得意ではない。
今日のような、色恋を売りつけてくる人々が多い場は特にだ。
「申し訳ないが、わたしにはパートナーがいる」
「ええ〜つれないなァ。まあ、そんな人に無理に来てとは言えないけど。でも名刺だけでももらってよ!ほら!私にもノルマってもんがあるの!」
無理やり懐に捩じ込まれたカードがパートナーに見つかったのが、二次会を抜け出して帰ってきた深夜のこと。
ギーマがこの時間に起きていることはザラだ。
「へえ……きみでもこんな店に興味があるのか」
「待て、誤解するな、これは無理やり渡されて……」
「……まあ、きみが嘘をつくことは考えにくいが。どうだった?色気のある奴だった?きみの胸にカードを捩じ込んだ奴は」
「わたしがギーマ以外に欲情することはない!」
一瞬きょとんとした顔を見せたのち、ギーマは噴き出した。
「くく、真面目な顔で言うんだものな……きみの事だ、そうだよね。少しでも気を揉んだわたしが馬鹿だったよ」
「嫉妬……したのか?」
「驚く?」
「いや……むしろ嬉しいよ」
「ふふ……じゃあ、そいつに触られたのを忘れるくらい、わたしのことを触って」
「ああ……全部上書きする」