指先から「どうしたの咲ちゃん、本とにらめっこなんかして」
「ロール!」
飲みかけのキャラメルラテのことも忘れて、ついつい目の前のことに熱中してしまった。今日はロールとお買い物をする日。カフェで待ち合わせて、あたしの方が早く着いたのだ。
「ごめんね、お待たせ」
「ううん、全然待ってないよ。手話の本読んでたんだ」
「手話?」
ロールは少しびっくりした顔をして、私の手元を覗き込んだ。表紙には両手のイラストが、たぶん「手話」という意味の形で描かれている。
「こないだの握手会で、耳の聞こえない人が、手話してくれたんだ。それを調べてたの」
「なんて言ってたかわかった?」
コートを脱いだロールはカフェオレを注文して、あたしの向かいに座る。テーブルの上のお砂糖の壺がかわいい。
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